当時中学生であった私達に募金を行うほどのゆとりなどなかった。けれども、署名を行うことで 『私は恵まれない子供達を助けている』 という自覚が芽生えてしまったため、 『 さらなる恵まれない子供達への募金という要望 』 を断ることができなかったのである。
友人は私に向かって「良いことをしちゃったよ」と言って苦笑いしていたが、内心忸怩(じくじ)たる思いであったことだろう。今となっては、募金した友人のお金がその外国人の懐を暖めているのではなく、きちんと寄付に回っていることを祈るのみである。
後に知ったのであるが、これは「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」という説得技術を用いた募金収集術である。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、最初は簡単な要求からスタートし、徐々に難しい要求をすることにより、希望する要求を説得する手法である。訪問販売などを行っているときに、まずは話だけでもと言って足 (フット) をドアに挟むことでドアを開かせ、最終的には契約を獲得する手法と類似しているためこう名付けられている。
司法書士が騙されてしまった詐欺事案
今回の例では、『署名のお願い』という小さな要求を飲ませた後、本当の目的である『募金のお願い』を持ち出すことにより、その要求が断られる可能性を減らしているのである。
換言すれば、「乗りかかった船にする」ということである。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックは、効果的な説得手法である。いろいろな場面で用いることにより、自らの説得技術に磨きをかけたいものである。
その一方で、このテクニックは詐欺にも応用されることがある。数年前のことになるが、フット・イン・ザ・ドア・テクニックを用いた詐欺事案を目の当たりにしたことがある。その手口は次の通りだ。















