電池が世界を変える?
火事場の馬鹿力と言われるように、人間には修羅場や土壇場では思わぬ知恵が出て来たり、飛んでもない力を発揮する能力もある。
誰もが馬鹿力を持っているわけではないだろうから、修羅場が終わり正常に戻った時には、力を発揮した企業とそうでないところのランキングが入れ替わったり、金持ちの順番が入れ代わったりすることになる。
100年に一度なんて大袈裟なことを言う気はないが、いまは世界も日本も大きな転換期にあるのは誰れの目にも明らかだろうから、その意味では産業革命やルネッサンスのような変化が出て来てもおかしくない。
不況が終わってみたらまったく別の世界が拓けていたと考える方がいいだろうし、そのためには過去に学びながら、過去の成功体験はむしろ忘れるほうがいい。よかった時代の帰らぬ夢に浸っている間に新しいイノベーションが進み、その新しい波に置いていかれることになりかねない。
たとえば自動車である。20世紀は文字通り自動車の世紀であり、ヘンリーフォードのT型フォードで幕を明けたガソリンエンジンによるモーターゼーリションが、21世紀は地球規模で進む温暖化という脅威もあって、旧来のガソリンエンジンがモーターに取ってかえられる世紀になるだろう。

オートモービルからエレクトリック・ビークル(EV)とクルマそのものの呼び名も変わるかも知れない。そんなことになれば産業構造は劇的に変わり、自動車関連の中小企業のあり方も大きく変わってくる。旧来のガソリンエンジンは複雑にできているため、トランスミッションやディスリピューターなど、エンジンのタテの動きを横の回転に変えるための機械がぎっしりとボンネットのなかに詰め込まれている。
バッテリーはむしろ補助的な役目でしかなかったのだが、電気自動車ならバッテリーが主役となるため、バッテリーの技術を制するものが世界を制することになるのは自明の理である。
日産・GMの逆襲
市場はそんなことは百も承知で、すでにGSユアサなどが値を飛ばしているが、バッテリー・メーカーが次世代バッテリーに血道を上げているのは日本だけではない。
中国などでもすでに電気自動車は実用化されつつあるし、いまのところ日本のバッテリー技術は世界をリードしているが、一回の充電に時間がかかることや走行距離が短くバッテリー本体が重いなど、まだまだ改良の余地は多い。
トヨタやホンダが優勢となっているハイブリッド車に出遅れた日産やGMが、これから電気自動車で勝負を挑んでくるのは必至であり、オバマ政権は明確に家庭で充電できるプラグイン電気自動車にウェイトを置く政策をとっている。
そのためGMのみならずダウ・ケミカルやGEも参入し、官民一体で環境対策車としての電気自動車の開発を行っているし、再生GMの目玉はシボレー ボルトという電気自動車になるようだ。
日本もいまや政局で政治はガタガタだが、それでも自動車・電池メーカーに加えて大学も参加して「オールジャパン」で次世代電池の開発に乗り出す政策を出してきた。新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)がまとめ役となる。
ハイブリットに出遅れたメーカーが、どう電気自動車で巻き返してくるか、当分市場は材料にはこと欠かないようだ。
1回の充電で480キロの走行
シリコン・バレーにベンチャーとして誕生した小さな自動車会社が、このほど7人乗りのテスラSという電気自動車を5万ドルで売り出し1000台の予約が入ったとか。1回の充電で480キロ走り出足もいいらしい。
若い時ならすぐすっ飛んでいって自ら試乗してみたいところだが、読者のどなたか代わりにぜひ現地に行ってみて、実際に自分の目で確かめてきていただけるとありがたい。ダイムラーベンツがこの会社の大株主になっているので、一見の価値はありそうである。理屈より「百聞は一見にしかず」が一番たしかな投資なのである。
さまざまなスタイルのクルマに出会えるのではないかと思うとワクワクするものだ。楽しくなければ生きている甲斐はない、人生変化があるから楽しいのではないだろうか。
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