堅実経営を続けてきたキリンが、近年大量の資金を投入して買収を矢継ぎ早に実施している。キリンが買収を急ぐ3点の理由とは。



 2009年1―3月期のビール系飲料出荷量は、キリンビールが2007年1―3月期以来、四半期ベースで2年ぶりにアサヒビールを抜いて首位となる見通しとなった。

 キリンは通常のビールより安い第3のビールで健闘、これがけん引しシェアを上げた。消費者の低価格志向に対応した商品・販売戦略が功を奏し、書き入れ時となる夏場に向けてシェア争いで一歩リードした形だ。

 しかしビール業界全体では、市場が年々縮小傾向にあり、キリンも危機感を募らせている。そういう背景から事業の成長を継続させていくために同社が力を入れているのがM&A、つまり他社の買収だ。これまでも国内で、協和発酵、メルシャンといった会社を買収しているが、07年11月に豪州の乳業大手ナショナルフーズ(負債の肩代わりを含めて約3,000億円)の買収してからは、海外企業の買収に矛先を変えている。

 昨年には豪州の乳飲料メーカーであるデアリーファーマーズを約840億円で買収し、12月に豪州最大手の清涼飲料メーカーであるコカ・コーラ・アマティルに約4,880億円の買収提案を行っていることを明らかにしている。事業拡大を目的としているとはいえ、国内の大企業でもここまで頻繁にM&Aを行う会社はめずらしい。堅実経営を続けてきたキリンを買収攻勢に走らせているのは何か。

 キリンが買収を急ぐのは3点の理由からだ。1つは不況で国内外の企業の株価が下がっていることで、買収しやすい環境にあること。2つ目に金融危機によって借入金利が下がっているためにM&Aに必要な資金調達が容易になっていること。そして3つ目が円高で海外企業を買収しやすくなっていることだ。

 キリンはもともと財務体質に優れており、収益力も安定していることから国内企業では「優等生」的な存在だ。しかし飲料系の市場は国内の人口減少とともに縮小傾向にあるため、資金を使って海外進出を一気に進めるタイミングを探っていた。買収対象の企業の資産価値が下がっており、円高にある今がチャンスと見て買収攻勢を仕掛けている。足もとでは世界同時不況による消費不振や需要減退が気がかりではあるが、将来を見据えた投資に出ている。

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