不況の中、自動車業界の給料が明らかとなった
未曾有の経済危機からの出口が依然として見えない中で、会社員の給与はどうなっているのか。ダウンしているとすればその幅はいくらか。08年度の従業員平均年間給与がほぼ出揃った。主要各社の推移を見てみよう。
今回の大不況で最も打撃を受けたのは自動車業界。GMの転落で生産・販売の両面で世界一に登りつめたトヨタ自動車にしても、前期(09年3月期)は4000億円を超す大幅な最終赤字を余儀なくされた。それ以前は5期連続で1兆円台の最終黒字を計上していたのだから、まさに悪夢の転落である。
赤字の最大の要因は販売の減少。トヨタグループが対前年度比で失った売上高は、北米で3兆円など、全体では5兆7596億円に達する。この5兆数千億円という減収、たとえていえば、セブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂、そごう、西武百貨店などを擁するセブン&アイ・ホールディングス(HD)が、跡形もなく消え去ることを意味する。単体ベースの売上減も2兆8007億円で、これはシャープの全売上高に匹敵。
そのトヨタ自動車が、現場作業に従事する従業員を含め、給料や手当として計上している金額だけでも8000億円弱(単体ベース)。そして、従業員平均年間給与は811万円である。製造業ではトップレベルの水準。管理職を中心に年収1000万円を軽く超す社員が多数在籍していることを示している。
ただし、前年比では18万円を超すダウン。減産にともない残業や休日出勤が減ったことが主な要因といっていいだろう。最終黒字を確保したホンダもトヨタを上回るダウン。対照的に赤字決算の日産自動車はアップ。日産はトヨタやホンダを下回る給与水準の底上げへの取り組みが反映した形だ。

このように、トヨタ、ホンダ、日産の3社にかぎっていえば、2000年から、給与はほぼ右肩上りで推移。業績悪化にともなう賞与のダウンなど、年収の減収が顕著になるのは今年度からと見ていいようだ。
他の自動車・二輪メーカーはどうか。
減額幅が目立つのは、マツダ、スズキ、いすゞ自動車。スズキは他社に先駆けて在庫の圧縮に動き、「1部品1g軽減・1円コスト低減活動」に取り組んだことで、残業代などが圧縮された結果だろう。事務部門の賃金給料総額に限ってみても、10億円程度の減額になっている。
128万円という大幅なアップがひときわ目に付く日産ディーゼル工業。ただし、同社は前年度125万円という大幅なダウンになっており、以前の水準に戻ったと見ていいだろう。

自動車同様に今回の不況の直撃を受けている電機やその他の製造業の給与はどう推移しているのだろうか。ソニー、富士通の給与も見ていこう。
電機業界は、給与アップ組とダウン組に分かれる
電機では、ソニー、富士通、三菱電機、NEC、日立製作所、日本ビクターがアップ組で、ダウンはパナソニック、東芝、シャープ、三洋電機、パイオニアと二派に別れた。

減額が突出しているのが半導体装置メーカーの2社。東京エレクトロンは215万円、アドバンテストは198万円のマイナスである。
鉄鋼や化学といった素材関係では、三菱ケミカルHDの164万円アップが異例。同社の子会社である三菱化学を含め、三井化学、住友化学、新日本製鉄など軒並みダウンだ。
流通や外食はアップ・ダウンの二極化が鮮明。アップ組はマツモトキヨシHD、エディオン、西松屋チェーン、ローソン、ゼンショー、王将フードサービスなどで、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)や青山商事などはダウン組。百貨店のH2Oリテイリング、J.フロントリテイリング、高島屋は揃って減額。外食のロイヤルHD、モスフードサービス、日本ケンタッキー・フライド・チキンの減額幅も大きい。大庄はここ5、6年、400万円の同額で推移している。
売上高のほぼ半分が人件費に消えるヤマトHD
次に運輸業界の給与を見ていこう。
国の支援がなければ存続すら危ぶまれるほどの危機に直面している日本航空。同社の子会社、日本航空インターナショナルの運航乗務員の平均年収は、前年比15万円強のダウンにすぎないが、ピークからは140万円を超す減額。
ライバルの全日本空輸を含め、運輸セクターでは、給与ダウン組がほとんどだ。ちなみに、ヤマトHDのグループ人件費総額は6211億円。連結売上高に占める人件費の割合は49.6%と、売上高のほぼ半分が人件費ということになる。

今回の大不況をいち早く察知した企業の1社が電通だ。同社は、08年9月15日の「リーマン・ショック」が起こるおよそ2週間前に、取締役報酬の10%~5%返上を発表しているほどだ。従業員の給与にもその影響が及び、電通は78万円、博報堂DYHDは236万円の大幅減額となっている。
フジはライブドアの和解金で給料アップ!?
広告に依存するマスコミも同様で、例外的に平均年収がアップしたのはフジ・メディアHD。フジは旧ライブドア(現LDH)から和解金310億円を得ており、それが給与アップの原資になったのだろうか。
金融セクターでも、損保の東京海上HDを除いてはダウン。とくに、野村HDは262万円、大和証券グループ本社は3258万円と、証券会社の大幅な給与ダウンが目立つ。
こうして見てみると、年収に占めるボーナスの比重が高く、かつ業績反映の割合が高いと推定される企業の年収ダウンが顕著。いわゆる、業績連動型の給与体系にシフトしている企業だ。そしてそれは、旧来型の給与体系を残す多くの企業のこれからを暗示しているといっていいだろう。
今夏のボーナスの減額や給与カットなど、一般的な多くの企業での給与ダウンは、今年度からが本番。年収ダウンはもはや避けられないところまできているわけで、一刻も早い不況からの脱出が待たれる。
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