ニンテンドーDSを普及させ、「ゲーム人口拡大戦略」に成功した任天堂。DSテレビやDSvisionなどのサービスをリリースし、ゲームだけではなく、書籍や音楽、映像等を楽しむ端末としての商品ポジションを確立させようとする同社の次なる戦略にスポットをあてる。



日本においてDSが2,000万台の出荷を突破

 任天堂によると、ニンテンドーDSとDS Liteの日本での発売以来の累計出荷台数が2,000万台を超えた。これは過去のハードよりも速い普及のペースであり、任天堂の「ゲーム人口拡大戦略」が成功したといえよう。

 すなわち、従来はゲームをしなかった人もDSを購入した結果、従来のゲームユーザーにのみ販売する普及スピードよりも速くなっているのである。そして、それをけん引したのは、従来のゲームらしくない「脳トレ」等のソフトであった。

 しかし、2,000万台という数字自体はPS2が累計販売台数で達成している水準であり、逆にいえば、これまで「ゲーム人口拡大」といっても、結果としての数字は従来のゲーム産業の推移で説明できる範囲にとどまっているともいえる。今後の日本のDSの展開、販売推移が本当の意味での「ゲーム人口拡大」戦略の結果を示すものであるといえよう。

 この点では、ゲーム機を越えたプラットフォームとして確立されていくことで、普及率が上昇すると考えられる。すなわち、ゲームだけではなく、書籍や音楽、映像等を楽しむ端末としての商品ポジションが確立されることで、ゲーム人口に依存しない普及台数となる可能性である。

 さらに「DSテレビ」や「DS文学全集」、「DSvision」などの具体的なサービス、アプリケーションを考慮すると、その可能性は高まるだろう。そして、任天堂は物理的なインフラを充実させるために、無線配信拠点数を増やし、アクセス機会を増加させる方針だ。

アクセスが殺到した「DSテレビ」

 任天堂は11 月8 日からDS 用ワンセグ受信アダプター「DS テレビ」の予約受付を始めたが、ホームページのみの販売のため、アクセスが殺到、開始直後から受付不可能な状態となった。

DSテレビ
DSテレビ

「DS テレビ」では、単にテレビを視聴できるだけでなく、テレビ画面を一時停止してメモがとれる「メモ」やテレビを見ていて疲れたら「ツボTV」、ワンセグを受信したエリアを自動的に記録する「TV の旅」、テレビを一緒に観てくれる仲間を集めた「TV やん」、表示された字幕を自動的に記録しているので、後からテレビを読むことができる「読むTV」など、テレビをより便利に楽しむ機能が搭載されている。

2010 年度に100 億円の売上高を目指す「DSvision」

 またam3 と大日本印刷はDS 向け出版・映像コンテンツ配信事業「DSvison」を08 年3 月から開始する予定だ。DSvisionは、マイクロSD カードに映画や小説、マンガなどをPC の専用サイト「DS ビジョンメガストア」からダウンロードし、DS 向けソフトと同じサイズの専用アダプターにカードを接続して、DS で視聴するサービス。

 08 年1 月に512 メガのマイクロSD カード、専用アダプター、USB 接続のカードリーダーライターのセットを3,980 円で先行販売し、3 月に正式サービスを開始する予定だ。コンテンツは未定だが、正式スタート時までに300 タイトル用意し、2011 年には1 万コンテンツ、2010 年度に100 億円の売上高を目指す。

DSvision
DSvision

 すでに、「DS文学全集」では、ソフトに収録されている本以外にニンテンドーWi-Fiコネクションを利用して追加でダウンロードできるようになっており、これは、デジタル書籍のダウンロードに他ならないといえる。「DSvision」はこれをさらに進化させたサービスといえよう。

これまでの任天堂のネットワーク戦略

 これまでにもゲーム機とネットワークを利用して、ゲーム以外の用途として利用するサービスは存在した。ファミコンにおいては、「ファミコントレード」という、ファミコンを利用した電話回線経由の株式売買サービスが存在した。

 また、スーパーファミコンの時には、1995年に「サテラビュー」というサービスを行っており、BSデータ放送を利用して、ゲームのダウンロードや情報の配信を行っていた。さらに、1999年にニンテンドウ64でリクルートと提携して、TVモニターと家庭用ゲーム機を使用した会員制ネットワーク事業「エンターネットサービス(仮称)」を行う合弁会社を立ち上げた。

エンターネットサービス
DSvision

 この会社はランドネットDDとなり、ニンテンドウ64で以下の表のうち一部のサービスが実現された。携帯型においても、GBCでは、携帯電話を利用した「モバイルシステムGB」サービスがあった。
 
 これらのサービスは現在では他社が実現しているものが多い。例えば、インターネットを利用した株式の売買の原点は「ファミコントレード」にあるといえるだろう。すなわち、任天堂のネットワークサービスは現在の様々なインターネットサービスの先駆者だったともいえよう。

拡大するネットワーク戦略-そして、ゲームを超えたプラットフォームへ

 任天堂はWiiにおいてもNTT東日本、NTT西日本と提携し、Wiiと「フレッツ光」との接続の推進に向けて協業すると発表するなど、ネットワーク戦略を積極的に展開する方針だ。

 当面は過去のソフトをダウンロードする「バーチャルコンソール」やネットワーク専用の新作ソフトの「Wiiウェア」のダウンロードといったゲームのダウンロードが主要なサービスとなろう。ただし、最終的には、DSとWiiのネットワーク戦略が成功し、両者の間での連動の利便性が高まれば、任天堂はゲームの配信網とその配信端末を確保することになろう。

 そして、そのプラットフォームでは、ゲーム以外のコンテンツでも十分流通させることが可能になるとみられる。この方向性は任天堂以外の家電メーカーやPCメーカー、IT企業が目指す方向と一致するだろう。

 この競争において、任天堂はすでにネットワークサービスのノウハウを保有している点やゲーム開発における「世の中を驚かせる」という会社の基本戦略が継承されると予想される点において優位性を保有していると考えられる。

 最終的にプラットフォームを拡大させるには、けん引役となるコンテンツ・サービスが必要となるが、任天堂のこれまでのさまざまなゲームタイトルのヒット実績を考慮すれば、このコンテンツ・サービスの開発力においても優位性があると考えられよう。

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