
この成功本はここがミソ!
いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの脳科学者、茂木健一郎氏の出世作である。現在の肩書きを拝見すると、
「ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー」
「東京工業大学大学院連携教授」(脳科学、認知科学)
となっており、そのプロフィールは、
「1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職」
となっている。どこから見ても、われわれ下々の者が及びもつかない、秀才の中の秀才、キングオブ秀才といったほうがよいかもしれないアタマの持ち主なのである。
そんな生まれつきの秀才の勉強法なんて、一般人には役に立たないと思いがちだが、これだけヒットするには、それなりの理由があるのだ。
それは、「脳を喜ばせば勉強ができるようになる」ということ。これまでのやる気や効率などを重視するメンタルな勉強法と違って、脳を身体の一部と考えてフィジカルな勉強法を唱えているところだ。
自分の好きなことをやることで、脳が喜び、ドーパミンが分泌すると、その行動を克明に記録して、その快感を再現しようとする。それが、次第に常習化すると、その行動も上達して、ますます良い結果が期待できるという仕組みである。
ドーパミンは、交感神経節後線維や副腎髄質に含まれるホルモンの一種で、常に出ているわけではなく、ここぞというときに分泌されるもので、本来、いろんな行動の動機となるものを学習する因子である。たとえば、サルを使ったドーパミンの阻害実験では、学習能力の低下が起こったという実験がある。
本書では、ドーパミンが分泌される仕組みを「強化学習」といい、脳は「試行錯誤の末の成功」を体験したがっているので、脳に負荷をかけることこそ効果的な勉強法だとしている。
簡単に聞こえるが、実は大変やっかいな方法だが、茂木氏本人は、この方法で大成功している。学生時代は決して秀才とはいえなかったが、脳の特性を知って、自分の脳と上手につき合うことで、「勉強」そのものを楽しみ、華麗な学歴を歩んでいる。
しかし問題は、人は自分の脳の喜ぶことばかりをしているわけにはいかないという面である。もともと勉強嫌いの子や好きな仕事に就いていない人はどうすればよいのだろう。
そんな人に共通していえるのは、「自分にはできるはずがない」とか「自分には荷が重すぎる」とか、マイナス思考に陥りやすいということだ。そんな後ろ向きの考え方を改めて、思いついたり、気が向いたらすぐに始めることが、問題の克服につながっていくのである。
1155円の本書一冊で、本当に簡単に勉強や仕事が楽しくなれば儲けものだが、秀才のいうようにはなかなかうまくいかない。
そのうえ茂木氏本人も、報道されているようにきらびやかな実績ばかりではないのだ。実は誰も指摘しないが、数年前、出井ソニーの超目玉戦略として茂木氏が中心となり、「クオリア」ブランドの商品を数多く登場させたが、どれもパッとせず、結局ソニーを退職することになった。そして、当時は日本の救世主ともてはやされた出井伸之氏も、「ソニーショック」といわれた予想以上の業績の落ち込みで、責任をとって辞任している。
こうしてみると、脳科学者の茂木氏も、自分の脳とはすべてうまくつき合っているわけでないということか。あるいは、表現者や発信者として優秀ではあったが、クリエーターとしては超一流ではないということなのかもしれない。いずれにしても、脳も脳科学者も、まだまだ解明できないミステリアスな世界である。
次に心理カウンセラーで成功本アナリストの高橋聰典氏に本書の解説をしてもらったので、ぜひ参考にしてほしい。(次ページへ続く)














