
この成功本はここがミソ!
このところ下火になりつつあるが、ひと頃は「勝間」、「カツマ」、雨、「勝間」という弱小野球チームの投手ローテーションのように、勝間本が花盛りだった。
仕事も恋も結婚も、あなたの努力とポジティブシンキングで、必ず成功するというお題目が、これでもかとちりばめられて、多くの<カツマー>たちを熱狂させたが、そろそろ賞味期限が切れてきたようだ。
本書も、その辺を敏感に感じ取り、「ほどほど」や「そこそこ」でも自分の幸せを見つけることができるとして、過度の頑張りや努力を勧めない内容になっている。
恋愛や仕事、子ども、お金などにしがみつかない生き方を、自らの診療体験を通して、ナチュラルに解き明かしている。カツマーたちには、それとは対照的な生き方を認め、最終章では「〈勝間和代〉を目指さない」として、「その他大勢の人たち」にエールを送っている。
そもそも勝間氏は、「妬む・怒る・愚痴る」ことを成功を妨げる三毒としているが、それこそ人間の持って生まれた煩悩で、それを否定することは自分を否定することにならないか――著者の香山リカは、精神科医の立場から見ると、いくら努力しても報われない人間もいて、幸せのもの差しは「成功」「お金」「地位」などだけでは計れないとする。
実は診療の現場では、いくら努力してもどんなに頑張っても、報われない人や不運な人の方がはるかに多いのだ。中には、努力したくてもできない人もいれば、努力しても思い描いた結果に結びつかない人もいる。
そんな人たちを無視したり、否定したりすれば、社会が成り立っていかなくなってしまう。お金の格差は努力の格差だとする単純な結論は、いびつな社会を形成して、弱者を無差別犯罪に駆り立ててしまう可能性もあるのだ。
カツマーたちが信奉する「努力」→「競争」→「成功」という方程式は、単純で容易なように見えるが、実は世の中には、その「問題用紙」さえ配ってもらえない人の方が多いのである。
勝間氏本人は、いろいろなところから講演依頼や執筆依頼がきて、それを交通整理して、ごく一部だけを受諾して、それに集中することで、仕事の質が上がり、さらに依頼が増えていくという成功へのスパイラルを誇っている。
しかし世の中、仕事にありつけない人の方がはるかに多く、何らかの職に就いていても派遣社員やパート社員なら、いくら頑張っても正社員にはなかなか登用されないのが現状だ。そこで重要なのは、「努力」や「頑張り」ではなく「忍耐」や「我慢」だということを理解してほしい。
そして、たまたまいま成功しているとしても、それをすべて自分の努力結果と思い込み、どんなことがあっても、いずれは成功を勝ち取っていただろうと自負するのではなく、偶然と幸運の結果、成功していると考えたほうが自然なのである。
「わたしだって一歩間違えば奈落の底に落ちていたかもしれない」とか「いま上手くいっているのは運がよかったから」と考えることができれば、弱者や敗者へのいたわりや慈しみが生まれるはずである。
いちばんの真理は、実は成功者と敗残者はほんのひと握りで、あとの大多数は、「ほどほどの人」や「そこそこの人」なのである。それに気づくことができれば、どんな人でも人生は楽になり、どんなものにもしがみつかないで、楽しくそれなりに生きていけるということなのである。
次に心理カウンセラーで成功本アナリストの高橋聰典氏に本書の解説をしてもらったので、ぜひ参考にしてほしい。(次ページへ続く)
















