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アメリカが財政難から有人月探査計画を中止。先進国では宇宙開発競争の費用対効果について疑問の声も。一方で中印は競争を激化させている。


 アメリカが有人月探査計画「コンステレーション計画」の中止を決定した。1969年に人類を初めて月に送り込んだアポロ計画以来の大計画だったが、財政難から続行を断念した。

 2004年に発案されたコンステレーション計画は、遅くとも2020年までに有人月探査を再実現するもの。有人火星探査も視野に入れ、これまでに約90億ドル(約8100億円)が費やされた。計画を中止していなければ、さらに多額の予算が必要になっていたという。

 そもそも、宇宙開発は何のために行われるのだろうか。まず考えられるのは、国威発揚と軍事技術への転用である。

 世界の宇宙開発競争は、1957年に旧ソ連が世界初の人工衛星を打ち上げたことから本格的に始まった。旧ソ連と冷戦下にあったアメリカは、宇宙開発で旧ソ連に負けたことにショックを受け、積極的に宇宙開発に力を入れた。その結果、人類初めての有人月探査では、アメリカが勝つことになった。

 冷戦下の国威発揚で始まった宇宙開発競争だが、それ以外の目的もある。宇宙開発によって培われた技術は、人工衛星ビジネスなどの宇宙産業だけでなく、関連分野を含めて広くハイテク産業の成長にも寄与する。

 市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングが出したレポートによれば、宇宙開発に直接関わる宇宙機器産業だけでも、市場規模は日本で約2300億円、ヨーロッパで約8700億円、アメリカで約3兆8000億円になるという。周辺分野も含めると、宇宙関連市場はその何倍にも膨らむと言われている。

 ただ、とくに先進国の国民世論は、宇宙開発競争を割に合わないと感じているようだ。先進国が財政赤字を抱えていることが理由としてある一方で、先進国の国民は、国威発揚に燃える段階を卒業しているのかもしれない。

 アメリカ国民の半分は、有人月探査にも有人火星探査にも反対している。この世論はコンステレーション計画中止にも影響を与えた。

 日本国民も、宇宙開発にはそれほど熱中していない。2009年に政府が作成した「宇宙基本計画」案では、「日の丸人型ロボット月面歩行計画」なる計画が盛り込まれていた。ところが、国民から募集したパブリックコメントでは、「これに一体何の意味があるのか?」「大人の自己満足以外の何物でもない」と、きびしい批判が目立った。

 一方、新興国のインドと中国は、宇宙開発競争に力を入れている。インドは2016年までに有人宇宙飛行をする計画を準備しており、予算規模は約26億ドル(約2340億円)。中国は、2003年に「神舟5号」を打ち上げて、世界3番目の有人宇宙飛行を達成している。

 日本も、将来的な有人宇宙飛行を掲げてはいるが、具体的な計画はない。仮に日本が計画を進めると、約2兆円かかるという試算も。インドや中国に対抗して、国威発揚のために宇宙開発競争に日本が積極的に参加する可能性は高いとはいえないのが現状だ。

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