新規住宅着工を見てみると、2007年6月に駆け込みで増加した後、7月には前年比マイナス23%、8月9月にはおよそマイナス45%と前年の半分になってしまいました。

 米国でも住宅バブルが崩壊し、住宅建設が激減していますが、それでもまだ前年比マイナス20%程度ですので、日本の住宅建設の落ち込みがどれだけ異常なものかが分かります。その中でも一番影響を受けたのは、適合判定を義務付けられた大規模なマンションや工場で、ほぼ建設がストップしてしまいました。

©出所:Bloomberg、国土交通省

 国土交通省は秋以降少しずつ対策を出し、11月現在新規住宅着工は前年比マイナス25%程度と回復の兆しを見せ始めています。しかし詳細を見てみると、適合判定の必要のない小規模な住宅などはほぼ回復、そして工場や大規模マンションなど適合判定が必要な建造物も少しずつ回復しているものの、まだ「正常化」にはほど遠い状態が続いています。

 建築着工がほぼ半減し、2007年第3四半期のGDPにマイナス1%程度の影響を与えたと言われるこの改正(?)ですが、建設後他人に販売するマンションや住宅はともかく、建設後自分で使用する工場にまで法律の対象が広がっていることや、このような大改正が及ぼす影響が施行前に考慮されなかったこと、それ加えて改正後影響が顕在化した後も対策が後手後手に回ったことなど、非常に不可解なことが多数あります。一体なぜこのような大問題なったのでしょうか?

だれも見ていない建築の実務と実情:2ちゃんねるに綴られた経緯

 これには大きな原因が2つあると考えています。1つ目は国土交通省の実務の知識不足と準備不足、2つ目はマスコミ、エコノミスト、そして日銀に至るまで、問題を監視すべき人々の建築への無理解です。これらの問題の経緯を理解する上で、巨大掲示板「2ちゃんねる」が参考になるかもしれません。

 2ちゃんねるでは、法律施行前から「改正建築基準法」というスレッドが建ち、法律改正の問題点からいかに建築確認申請が滞っているかという建築実務者の悲鳴が、つい最近、事態の深刻さがようやく世間で認識され対策が本腰を入れて採られるようになるまで、書き込まれ続けていました。

 2ちゃんねるという不特定多数の書き込み可能な巨大掲示板における情報がどれだけ信頼できるかという点においてはさまざまな意見がありますが、この問題については結果的に2ちゃんねるへの書き込みが正しかったことから、経緯を理解する目的で参考にしてもいいのではないかと考えています。

1) 国土交通省の準備不足

 一番大きな問題は、国土交通省の準備不足でしょう。法律の大改正にもかかわらず準備と周知期間の短さ、法律施行日になっても決まっていない法律の運用細目、人数の足りない判定員と認定プログラムなどツールの欠如など、挙げればきりがありません。

 これらのことは法律改正施行前にパブリックコメントが募集された際、業界からの意見として提出されているはずなのですが、全く考慮されず法律は期日通り施工されました。つまり現場が混乱することは明白であったのにもかかわらず、国土交通省とその担当者は法律施工を強行しました。

 なぜ強行してしまったのか、担当者が本気で混乱が短期で収束すると信じていたのか、実務を知らず起こりうる混乱の大きさを理解できなかったのか分かりません。または、国民のことなど全く考えず、省益や自己の保身を考えた結果なのかもしれません。いずれにしてもGDPにしてマイナス1%程度の人災のトリガーが国土交通省により引かれました。

 続いてもう1つの原因は「マスコミやエコノミストの認識不足」です。



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プロフィール
課長 今調査役カチョウ イマチョウサヤク

大学院で物理学を志すも途中、島耕作にあこがれ金融業界へ。本職は債券市場と計量分析のアナリスト(自称調査役)であるが、お金の流れを追う過程でマクロ経済、株式、商品、アセットアロケーションなどを学び、株の銘柄選択以外すべてに通じるマルチアセットアナリストとして、多方面で活躍(予定)。日本人として日本人の資産をいかに有効利用するかを生涯の目標とする。
好きな言葉 「潮が引いたとき、誰が裸で泳いでいたかがわかる」


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