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相続税の改正で課税対象者が拡大、対策はどうすれば?――『ど素人ができる相続&贈与の申告』著者に訊く

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2015/09/18 08:00

 2015年1月に相続税と贈与税が改正され、相続税の課税対象になる方が前年の2倍になると予想されています。ですが、準備をしていない、何をしたらいいか分からない、そんな方も多いかもしれません。いったいどんな準備をし、対策をすればいいのでしょうか。税理士法人チェスターの代表・荒巻善宏さんにお話をうかがいました。

 相続税と贈与税、自分には関係がない。そう思っている方は案外多いかもしれません。ですが、2015年1月1日に税制改正が行なわれ、特に相続税についてはこれまでの条件であれば関係なかった方でも、今年からは基礎控除額の引き下げにより納税しなければならなくなっている可能性があります。

 いきなり相続税という言葉を突きつけられても、「分かりました」と理解できる方はいません。そもそも自分が相続税の課税対象になっているのかすら分からないでしょう。

 翔泳社では、相続税とそれに深く関連する贈与税の申告でお困りの方のために、9月11日(金)に『ど素人ができる相続&贈与の申告』を刊行しました。書類の記載例豊富な本書を読めば、申告に関してはひととおりこなすことができます。

 著者の税理士法人チェスターは、相続税申告を専門としている税理士が多くない現状で、相続と贈与に関してさまざまな相談を持ち込める数少ない拠り所です。そこで今回、代表の荒巻善宏さんにお話をうかがいました。

ど素人ができる相続・贈与の申告

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ど素人ができる相続&贈与の申告
著者:税理士法人チェスター
出版社:翔泳社
発売日:2015年9月11日(金)
定価:1,500円(税別)

目次

  • 巻頭特集:ざっくり分かる相続・贈与のポイント
  • 第1章:相続税の概要を知ろう
  • 第2章:相続税の計算をしてみよう
  • 第3章:相続税に関する書類を書いてみよう
  • 第4章:贈与税の概要を知ろう
  • 第5章:贈与税・贈与関連の書類を書こう
  • 第6章:遺言書などの各種書類を書いてみよう

相続税が改正され、課税対象者が2倍に

――よろしくお願いします。そもそも相続税とはどういうもので、改正によってどう変わったのですか?

荒巻:相続税とは一定額以上の財産を持っている方が亡くなったとき、その遺産を受け取る方が払う税金です。遺産の金額が基礎控除額以下であれば相続税はかからず、基礎控除額以上だと納税が必要です。

 相続税は2015年1月1日に改正され、「3000万円+法定相続人×600万円」が基礎控除額となりました。それまでは「5000万円+法定相続人×1000万円」が基礎控除額でしたから、引き下げによって相続税が必要になる方がとても増えました。改正前の約5.4万件と比べて、申告件数が約10万件と2倍になるのではと予想されています。

――相続税の改正にはどんな背景が?

荒巻:多くの方に関係のある消費税は8%になり、10%に増えることが予定されているのに、富裕層が対象となる相続税が少ないのは不公平だということで、相続税が上げられたというのが主な背景です。

荒巻善宏さん
税理士法人チェスター 代表:荒巻善宏さん

相続税なんて考えたこともなかった方が課税対象に?

――改正によって相続税の課税対象が拡大したということは、「まさか自分が」という方が増えているのでしょうか。

荒巻:そういう方からの相談が顕著に増えています。今年に入って多い相談としては、自分の家が裕福だとは思っていなかったのに、いざ遺産を計算してみると相続税が必要になりそうだというケースです。親の生前に税理士との付き合いは一切なく、相続を経験したこともないので、どういう資料が必要でどういう手続きをすればいいのかまったく分からないんです。

――では相続の手続きは普通、どのような流れで進めるのでしょうか。

荒巻:まずは隠し子などを含め、誰が相続人かを確定させることですね。そのあと財産調査をします。亡くなった親がどんな財産を持っているのか、借金がないかなどです。その結果、基礎控除額以下の遺産であれば申告は簡単ですね。分配の方法を決めて、名義を変更するだけですので。相続税が絡むと資料をきちんと集めないといけないので、それだけで手続きの難易度がかなり上がります。

難しいのは不動産評価、それ以上に親の財産を知ること

――手続きで最も戸惑ってしまうことは何ですか?

荒巻不動産の評価をしなければならないので、ここでつまづく方が多いと思います。不動産は国税庁が発表している路線価を使いながら評価するんですが、土地の形によっては評価額を決定するのが難しいんです。

――不動産だけでなく、両親のすべての財産を知っている方は多くないのでは?

荒巻:そうですね。タンスの引き出しを全部開けて、通帳を調べて……。「こんなに持っていたんだ」と驚く方が多いです。両親の財産なんて見当もつかない方もいるのではないでしょうか。生前には聞きづらい方もいるかもしれません。そもそも預金口座の数やどんな保険に入っているかも分からない場合もあるでしょう。預貯金が少なくても、高額の生命保険に加入している方は意外といらっしゃいます。

――そういったことを制度についてまったく何も知らない方が調べて、さらにミスなく申告をして……となると、かなり難しい気がします。

荒巻:たしかにややこしいところはありますが、本書を読めば、それほど複雑でない遺産相続に関しては自分で手続きができるようになります。今年は税理士に頼まずに、申告書を自分で書いている方が多いのではないでしょうか。

――それはどういう理由からなのですか?

荒巻:税理士に頼むとお金がかかるので、自分でできるのではと思って書く方が多いようです。ですが、途中で諦める方も多いですね。所得税のように申告書を作成する専用のソフトがあるわけではないので、すべて手書きしなければならないんです。

 実際には税理士に相談しなければならないことが多いでしょう。申告に漏れがないかなど、きちんと書類を用意できている方が確認のために相談に来られることもあります。

相続税を払いたくない……そんな相談には?

――相続税を払いたくないと相談に来られる方もいるのですか?

荒巻:いらっしゃいますが、払いたくなくても、遺産が基礎控除額以上であれば払うしかありません。払わなければ脱税になります。それに税務署が預貯金などすべての情報を把握できますから、とても隠せませんね。相続税を減らしたいのであれば、生前に対策をして、財産の評価を下げることが大事です。

 現金でなく不動産を買ったほうが評価が下がるので得になったり、生命保険に入って非課税枠を使ったり、養子縁組をして相続人を増やしたりなど、生前だといろいろな相続税対策が可能です。早ければ早いほど効果的ですね。

相続税を心配する子供の立場から

荒巻:また、親が大きな財産を持っていそうなのに、何も対策をしないことを危惧されている方もいらっしゃいます。

 自分から親には言いにくいので、税理士に頼むんです。僕もそういう方についていって、「お父さん、生前贈与してください」と説得したことがあります(笑)。結局は相続される側が気にかけていても、財産を持っている側が動かないとダメなんですよね。

――税理士とはいえ、部外者が親を説得するのは相当難しそうなイメージがあります。どのような方法で説得されるんですか?

荒巻:親のいまの財産を計算して、相続税を試算してみるんです。その結果を見せて、「対策しないとまずいですよね」と言うと、「いまから対策しようかな、どうしたらいいかな」となります。そこから対策には贈与や遺言書がありますよ、という流れにできます。

 財産を教えてもらうというハードルをクリアするのが難しいんですが。そういうときこそ税理士に相談してみてもらえればと思います。それに、今年は税制改正があったので、「そういえば改正されたよね」という感じで尋ねやすいタイミングではあります。

 あと、遺言書だけは必ず書いてもらいたいですね。遺産分配に関して兄弟で大喧嘩をしている家庭を見ると特に……。

贈与税は特例が増え、優遇されるようになった

――贈与のお話がありましたが、贈与税とはどういうものですか?

荒巻:贈与税は、暦年課税の場合、生きている間に年間110万円以上を誰かに贈与したとき、贈与された側にかかる税金です。相続税が改正されて、将来多く相続税を払わなければならないのなら、いまのうちから財産を贈与しておこうと考える方が急増しています。

 贈与された側は、110万円以上をもらったり、特例に該当したりすると、翌年に確定申告をしなければいけません。ですが、相続税の申告に比べるとそこまで難しくありません。ですので、贈与税の申告書を自分で書こうという方は本書を参考にしてもらうといいですね。

 なかなか記載例が掲載された解説本がありませんから、本書はおすすめです。贈与税の場合は本で読めば分かるくらいには易しく、自分で書く方がかなりいます。申告件数も年間40万件ほどあります。

荒巻善宏さん
税理士法人チェスター 代表:荒巻善宏さん

贈与特例は考え抜かれた制度

――贈与税は改正によってどう変わったのでしょうか。

荒巻:いままでと比べて直系の親族、子や孫に贈与する分が優遇されるようになりました。国としては、相続税を上げたので、払うのが嫌なら自分たちで対策してください、ということでしょう。その一つとして、贈与は暦年課税のほか、いろんな特例が用意されています。子供や孫への教育資金贈与(1,500万円まで)、結婚・子育て資金贈与(1,000万円まで)、住宅取得等資金贈与(2,000万円まで)の非課税枠などがあります。

 暦年課税は、いままでは遺産の推定相続人、つまり自分の子供が対象だったんですが、今年から推定相続人に加えて孫も対象になりました。2013年4月には教育資金贈与の対象が同じく孫に拡大したんですが、これは個人的に特に考え抜かれた制度だと思っています。

 祖父母は孫がかわいいからお金をあげたいけれど、親である自分の子供に無駄遣いされるかもしれないと不安になります。そこで出てきたのが教育資金贈与。この名目だったら安心だということで、孫に贈与するんです。特例の対象になるには金融機関に信託しなければなりませんから、子供の一存で目的外の用途に使うことはできません。

 国としては贈与を推奨していると思います。なぜなら、60代以上の方の懐に眠る多額のタンス預金や金融資産を市場に流通させたいからですね。高齢者はなかなかお金を使ってくれない現実がありますが、若い世代に贈与すればもらったほうが学費などで使えるようになります。すると眠っていたお金が消費に結びつきます。

お金を守る知識が必要になる時代

――贈与のお話を聞いて、自分のお金をいかに守るかということが大事なのかなと思いました。翔泳社の『外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話』でも、資産を守ることが中心テーマとして取り上げられています。

荒巻:これからは資産を守る時代です。ですが、この仕事をしていると特に思うのですが、日本人は資産を守る意識が低いですね。財産を低金利の普通預金にしている方が多く、やっていて定期預金くらいです。株や投資はほとんどやっていません。消費税は10%になり、所得税と相続税が最高で55%ですから、財産は減る一方です。

 アメリカのように投資したり信託を利用したりしないだけでなく、FP(ファイナンシャル・プランニング)を学ぶきっかけもありません。バブルのときは普通預金でも高金利でどんどんお金が増えていましたから、勉強しなくてもよかったんでしょうね。遺言書もあまり書きませんが、これは亡くなったあとのことを考えるのは縁起でもないという風潮があるからでしょう。少しずつ変わってきていますけれどね。

 相続税や贈与税に関しても、特例などどんどん自分で調べて知っていかないといけません。今回の税制改正がそのきっかけの一つになっていればいいですね。

いままさに手続きしている方も、準備したい方も

 『ど素人ができる相続&贈与の申告』は、荒巻さんのお話にもあったように、相続と贈与に関して必要な書類の記載例が豊富で、読めば1人で申告ができるようになる1冊です。また、相続税と贈与税についても詳細に解説していますので、何か疑問があれば、ぜひ読んでみてください。

 遺産相続をしなければならないとき、それは喪に服すべきときです。相続で頭を悩ますのではなく、きちんと故人を想うためにも、いまから準備を進めておいてもらえればと思います。

ど素人ができる相続・贈与の申告

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ど素人ができる相続&贈与の申告
著者:税理士法人チェスター
出版社:翔泳社
発売日:2015年9月11日(金)
定価:1,500円(税別)

目次

  • 巻頭特集:ざっくり分かる相続・贈与のポイント
  • 第1章:相続税の概要を知ろう
  • 第2章:相続税の計算をしてみよう
  • 第3章:相続税に関する書類を書いてみよう
  • 第4章:贈与税の概要を知ろう
  • 第5章:贈与税・贈与関連の書類を書こう
  • 第6章:遺言書などの各種書類を書いてみよう

 

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著者プロフィール

  • 渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

     翔泳社マーケティング広報課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

    Twitter@tiktakbeam

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