今の日本では相当な高水準の生活レベルを維持できてしまう。ただそれは、過去に蓄えた貯金があり、それを食いつぶしているだけなのだ。これがコバンザメの正体である。



なぜコバンザメが増えているのか

 日本国内では、経済が停滞し閉塞感が高まって「お家騒動」が勃発している。つまりコバンザメが増殖しているのだ。ここで言うコバンザメの意味を説明していこう。

団塊の世代を対象にした、投資信託販売

 一本の電話が鳴った。
「私、そちらさまの息子の○○さんと××小学校で同級だった△△と申しますが…」

 何の電話かと思いきや、よくよく聞いてみると銀行から投信販売勧誘の電話である。もしこの電話を年輩の方がとったらどうなるだろう? 自分の子供の同級生からの電話をむげに切ることができるだろうか。利回りを強調した商品をすすめられ、定期預金のつもりで購入しているのではないだろうか。目的ははっきりしており、退職金を手にした団塊の世代を対象にした、投資信託販売による手数料稼ぎである。

 これはフィクションではなく、筆者が耳にした実話である。これと同じようなことが日本中で行われていると推測する。

歳出の削減ができないニッポン

 ご存じの通り、日本の財政赤字は膨らむ一方である。財政支出の内訳をみてみると、医療費・防衛費・公共事業費・公務員の人件費・教育費…。必要なものばかりに見える。

平成19年度一般会計歳出の内訳
平成19年度一般会計歳出の内訳
出典:財務省ホームページ

 財政収支を均衡させようとすると、増税の一方で歳出の削減が不可欠である。それはわかっているはずなのに、歳出削減は一向にすすまない。個別の分野の削減の話になると既得権の壁にぶつかってしまう。防衛庁の汚職事件、道路財源の問題、省庁の随意契約問題、これらはすべて国の予算を食い物にした事件である。

付加価値は何か?

 お金を受け取るためには、何らかの付加価値を提供する必要がある。投信販売にはどんな付加価値があるか、道路をつくることの付加価値は何か。考えてみると興味深い。

 投信販売は、投資に関する知識のない人への投資教育という付加価値が第一であり、それをはたした上で、一般投資家に海外を含めたさまざまな資産への投資機会を提供するという付加価値がある。先に挙げた投信販売勧誘の例はこれらの役割を果たしているだろうか。

 道路整備にはいろいろな付加価値がある。公共事業としての所得再配分効果に加え、人々の生活環境や渋滞の改善に役立つ。しかし道路を造りすぎるとどうなるだろう。車の通らない道路をつくってしまったり、都会へのアクセスの向上により地方の資本の流失を招いたり、合計してみると逆に付加価値の低下を招いていないだろうか。

コバンザメが増えた理由

 過去の日本経済は世界に対してさまざまな付加価値を提供していた。相対的に安く高い学力を持つ勤勉な労働力、知識を集積しやすい企業文化などの優位性を基盤に発展を遂げてきた。つまり日本人であることだけで世界に対して付加価値を提供できたと思う。

 今はどうだろうか? 円はプラザ合意後に高くなり、人件費も中国の数倍になり、製造業では逆に欠点となっている。平均的に高かった学力も、勉強をする子供としない子供に二局化してしまい、お世辞にも皆が優良な労働力とはいえなくなってしまった。

 日本の企業文化も西洋式会社経営論の前に全否定されつつある。残るのは謙虚で勤勉という日本人の特性かもしれないが、これも怪しい。

 付加価値の提供ができなくとも、残念というか幸運というべきか、今の日本では相当な高水準の生活レベルを維持できてしまう。ただそれは、過去に蓄えた貯金があり、それを食いつぶしているだけなのだ。これがコバンザメの正体である。ただこのコバンザメは長生きできない。貯金がなくなったら、自分たちの持つ付加価値に応じた生活水準に戻す必要にせまられる。

付加価値の創造がより難しくなった現代

 付加価値の創造が難しくなった理由の1つが「産業の高度化」だ。例として半導体産業で新たな付加価値を創造することにどれだけの知識が必要か考えてみよう。半導体の仕組み、材料の特性、設計の手法やミクロでの電子の振る舞いなど、多岐にわたる。これだけのことを学ぶためには、化学、物理、数学などのかなり高度な理解力を必要とする。

 30年前の電気製品は分解すれば仕組みが分かった。レコードプレーヤーを分解すると中身はモーターとベルトで、レコードは針で引っかくと音が出た。だが、現代の電子機器は仕組みが分からない。

 CDプレーヤーを分解してもなかなか仕組みは分からない。

「レーザーが基盤にある凹凸を読み取って…」。子供に分かりやすく理解させるには、説明する大人に相当な知識レベルが要求される。分解しても黒いゲジゲジのたくさんのっている基盤があるだけで、理屈は説明できても動作は説明できない。

 もうひとつの理由は経済のグローバル化とインターネットの普及だ。競争が世界単位になり、スピードがあがり、研究開発にも規模が求められている。

 日本は「日本語」という非常に高い障壁で隔離されており、欧米企業に一気に侵略される可能性は少ないが、規模で攻めて来る相手と、実はすでにいたる所で戦っている。必要なものは知識であり、知識がなければB29に竹やりで立ち向かうことの意味を考えることすらできない。

付加価値を創造できる人材を!

 日本を再び付加価値を創造できる国にするためには、産業の高度化に対応した人材の育成が不可欠である。そのためにはどうしたらいいいか、何が必要かを真剣に考えてほしい。

 今の競争相手は、中国であり、韓国であり、その他すべての国である。自分が他の国の人々よりもよく学び考えているか考えてほしい。子供を持つ方は、自分の子供が他の国の子供より学び考えているかをみてほしい。立派な子供を育てることは大人ができる一番重用な付加価値の1つである。

 個人的には、物事の「なぜ?」を考える習慣を子供の頃から訓練し、身につけさせる必要があると考えている。子供たちが任天堂DSをしている姿をよく見かける。一度でいいからそのDS分解し、中身がどうなっているかを考える機会を持ってもらいたい。

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