昨今、「投資信託は投資家の利益を食いものにしている」などとメディアが声高に叫んでいますが、はたしてこれらの情報は本当に正しいのでしょうか?



メディアを鵜呑みにしないで自分の頭で考えよう!

 個人投資家の皆さんは、株式や投資信託などの金融商品に投資をなされるとき、新聞や雑誌に登場する専門家や評論家の予測や意見を参考にされることがよくあるのではないかと思います。

 私も、実際全国津々浦々と講演の旅に出かけて感じることですが、

「あの著名な○○さんが円は暴落すると言っているので全資産をドルに換えたところです」

あるいは、昨今のメディアによる投資信託の高手数料批判を受けて、

「コストが高い投資信託は投資家の利益を食いものにしている」

と、取り付く島もない方がどこの町にも必ずいらっしゃるわけです。

 情報収集やお勉強に熱心であることはもちろん良いことに違いないのですが、極端な破局シナリオを始めユダヤの陰謀論、あるいは読んだ本の内容を鵜呑みにして、その意見に固執する人から議論を吹っかけられたりすると、さすがに閉口してしまいます。

 原則投資は自己責任であることは言うまでもありませんが、専門知識に無防備な個人が無責任な評論家にノセられて財産を減らすようなことがあっては単なる事故では済まされないと思うのです。

 では、世間に横行する議論の中で、私から見て明らかに誤解や偏見に基づくと思われるもの、あるいは怪論(?)から3つのトピックスを取り上げて私見を添えたいと思います。「オマエの方こそ世間からずれている」 と仰せの方もおありでしょうが、それは読者ご自身の賢明なるご判断に諮りたいと存じます。

 やはり氾濫する情報を取捨選択する眼力を持ち合わせていなければ、投資の世界に限らず世間を上手に翔け泳ぐことはできませんからね。とりあえず、眼に余る誤解と偏見に満ちた議論にメスを入れたいと思います。

「コストが高い投資信託は投資家の利益を食いものにしている」は本当か

 お金を一切かけずに用を足そうとするのは誠に至難の世の中であります。

 何をするにもこの世の中はお金がかかります。切符を買って地下鉄に乗り、コンビニで買うコーヒーとサンドイッチで朝の腹ごしらえ。お金のかからないように図書館で読書をしようと思っても、休憩時間にメールを打てば知らないうちに…という感じですよね。

 お金なしで入手できるものといえばフリーペーパーぐらいなものですが、それだってお金を支払うスポンサーがいてこそ成り立っているわけです。

 ところが今、なぜか投資信託だけに限っては、手数料を払うことに対して極端に忌み嫌う風潮が世間を支配しつつあります。

「庶民の味方」を気取るメディアにとっても乗りやすいテーマなのでしょう、昨今、『金融機関にだまされない~』といった書籍や雑誌が氾濫していますよね。

 確かに、投資信託とそれを売る金融機関を悪玉にする構図は大衆受けがいいかもしれませんが(雑誌や本が売れますからね)、一般個人がその影響を受けて運用の選択肢から投資信託を外してしまったとしたら、心から「個人の資産運用は投資信託のポートフォリオ運用が一番」と考える私としては誠に残念でなりません。

投資信託は長期的には年利7-8%のリターンが可能

 連載第1回第2回においても述べたように、特別な専門知識を待たなくても適当な(長期的に市場平均を超えられるもの)投資信託を選んで分散投資を行えば、誰でも年平均7-8%程度の資産運用は可能なのです。

 それを手数料が高い(?)からといって、彼らからとりあげてどんなオルタナティブ(別の手段)を与えられるというのでしょうか。コストが安いからといって、他に専門のお仕事を持つ一般人に個別銘柄投資を安易に勧めてよいものなのでしょうか。

 専門用語を使って恐縮ですが、投資信託でポートフォリオ運用を行えば、標準偏差で約10%(外国債券なみのリスク)、長期的な期待リターンとして7-8%は十分に可能です。一般の方にとって大切なのは、期待リターンの高さそのものを追い求めることよりも、それをいかに安定して(低い標準偏差で)達成するかということなのです。

 言うまでもありませんが、個別株式銘柄への投資ではそのような安定性は得られませんし、今回のサブプライム・ショックのような市場の大きな下落があると恐怖心から投げさせられるような状況に陥ったり、そうならないまでも精神衛生上耐えられない人も出てくるはずです。

投資信託の手数料は決して高くない

 それに投資信託における3%の販売手数料は、目くじらを立てて怒るほどに高いものなのでしょうか?

 例えば、投資信託を1万円支払って購入するといたしましょう。手数料がゼロの場合、そのまま1万円分買付となりますね。それが年7%で10年間運用できたといたしますと、結果はほぼ2倍にあたる1万9,700円となります。

 では、3%の手数料が発生した場合は、300円が徴収されますので9,700円が実際の投資額となるわけです。それが同じ条件で10年間運用されると、その結果は1万9,100円となり、手数料3%の差は10年後に600円のインパクトを与えることになります。(下式参照)

投資信託の手数料は本当に高いのか

 この600円の差というのは、株式の投資信託であれば市場の変動が大きい日には1日、2日で動いてしまう程度の価格差でしかないのです。長期投資を継続し、たまたま売却の日が1週間ずれる程度の誤差とは考えられないでしょうか。

 この3%のために投資信託という運用の基本道具を最初から放棄してしまうのは、あまりに惜しくはないでしょうか。投資信託での運用を真っ向から否定するのであれば、それに替わりうる別の運用手段を提示する義務があるのではないでしょうか。

 それに個人投資家がマーケット・ポートフォリオ(市場全体の値動きを複製できるポートフォリオ)を低コストで保有できる唯一の手段が投資信託なのです。銀行預金などの安全資産を多く保有する個人が、マーケット・ポートフォリオを利用するとリスク・リターン特性からも効率的な運用を可能にすることは現代投資理論の教えるところでもあります。

「一粒で二度美味しい」がメディアの本質

 思い返せば、つい少し前まではメディアも投資信託を大いに囃(はや)していたように思います。それは、ホリエモン~村上ショックで傷ついた個人投資家が増えた頃のことでしたが、同時にインドやベトナムなどのエマージング株式市場人気が興隆を始めたあたりでもありました。

 リスクの高い個別銘柄投資に対して投資信託、そして個別投資が難しい新興国の株式に対して投資信託といった図式で盛り上がり、順風なマーケットにも支えられて、投資信託の一大ブームが到来しました。それが今や…ということですね。

 私は、どうもメディアに翻弄されているような気がして仕方ないのです。彼らからすれば、「一度持ち上げておいて、それから落とす」やり方は、話題を造って商売ネタを増やすことに繋がります。政治家、芸能人を取り巻くワイドショーにも顕著に見られる現象ですが、英雄に祭り上げられた有名人が一転ヒールへと落としめられたケースは少なくないはずです。

 彼らも熾烈な競争社会に置かれているとはいえ、あまりに度が過ぎるといずれは国民からも愛想をつかれることになるのではないでしょうか。

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