「何故、水でそれほど儲かるのか」と不思議に思われるかも知れない。まさか“水商売”というわけではあるまいが、実際には株価が急上昇を遂げている企業の場合、水を我々の日常生活にとどまらず農業、工業、健康、医療産業等に欠かせない技術の対象として研究開発を重ねており、その成果が世界の投資家から注目と期待を集めているわけである。

 さらに近年は貴重な水資源を確保する必要性が世界的に高まっており、水源地の利権をめぐる争奪戦の様相すら見られるようになってきた。このような動きに敏感な世界の投資家や投資ファンドが水危機をビジネスチャンスと受け止め、この市場に殺到するのも頷けよう。

ウォーター・ヘッジファンドが続々と誕生

 テキサスの石油投資家ブーン・ピケンズ氏もその先駆けだ。1999年にメサ・ウォーター社を立ち上げ、アメリカ各地の水源の開発、利用権を買占め、水不足に直面する自治体に売ろうとしている。アメリカ西部では水は石油と同じで、「見つけた者勝ち」の原則が当たり前。環境に優しいエネルギー源としてエタノールへの関心が高まっているが、トウモロコシからバイオ燃料のエタノールを生産するにも大量の水が必要とされる。

 実は、トウモロコシや大豆を生産する時には小麦の時より2倍もの水が欠かせない。そのため、投機筋の間では水に関する注目度が前例のないピッチで高まっている。思い起こせば、アメリカ史上最大のスキャンダル倒産を引き起こしたエンロンも水トレードビジネスを立ち上げようと動いていた。今、再び、水が投機の世界の主役としてスポットライトを浴び始めたのである。そしてウォーター・ヘッジファンドが続々と生まれるようになった。

 一方、多くの日本人にとって水は天から降って当たり前のもので、自然にいくらでも手に入ると受け止められてきたようだ。それどころか台風や長雨が続けば災害の原因にもなりかねないため、水に対しては貴重な資源としての認識が低いようである。けれども、世界全体を見渡せば砂漠化や水不足、そして水の汚染の深刻化がみられるようになり、安全で安心して飲める水が手に入らない地域の方が圧倒的に多いのである。

 そのため、世界銀行や国際通貨基金(IMF)など国際金融機関をはじめ様々な援助機関が発展途上国に対して、水を安定供給できるシステムを援助しようと取り組みを強化し始めた。なかでも水道施設を普及させるためのインフラ整備が大きな課題となっている。資金的にまた技術的に余裕のない貧しい国々にとっては、国際的な援助や支援なくしては国民の生命維持に欠かせない水の供給すら心もとない現状が横たわっている。

「水テク・パワー」知らぬは日本の投資家だけ

 このような、水の限られた地域に対して、国際金融機関の多額の資金が投入されるという現状からすれば、その資金の受け皿として期待される企業に投資家が先回りをして大きなリターンを得ようとするのも当然のことかもしれない。世界の投資家やファンドにとって、危機的状況を逆手に取りビジネスチャンスに転換させようとするのはお手の物ということである。

 しかし、日本ではそのような発想はこれまでなかった。水関連の企業で大儲けをしたというサクセス・ストーリーは聞いたことがない。冒頭で紹介したが、ようやくこの数年、日本の証券会社や投資信託が水関連や環境重視型のファンドを立ち上げるようになった。この状況を見るにつけても、我々があまり知らないところで日本の水に関する技術といったものが海外からは高く評価されていることが窺える。

 なぜなら、欧米の水関連ファンドが組み込んでいる技術系企業は、その大半が日本の企業で占められているからである。



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プロフィール
浜田 和幸ハマダ カズユキ

1953年鳥取県生まれ。東京外国語大学中国語科卒業。米国ジョージ・ワシントン大学大学院にて政治学博士号取得。米戦略国際問題研究所、議会調査局等を経て、現在、国際未来科学研究所代表。その国際情報収集能力には定評があり、優れた国際情勢分析で注目されている。主な著書には『ノーベル平和賞の虚構』『オバマの仮面を剥ぐ』『食糧争奪戦争』『「未来を創るエジソン発想法』『「大恐慌」以後の世界』『石油の支配者』『ウォーター・マネー「水資源大国」日本の逆襲』『「国力」会議:保守の底力が日本を一流にするヘッジファンド―世紀末の妖怪』などがある。


本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る


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