北京五輪という華やかなイベントで民衆の財布のひもが緩くなり、購買力が高まることで景気につながるというのが中国政府の狙いだったが、五輪終了後はその購買力も急速に縮小すると予想される。一方で当局が一番恐れているのは、貧富の格差の拡大によって暴動が起こり、人心が乱れることだ。(バックナンバーはこちら



ヤラセだった開会式の足跡花火と少女の歌声

 テロなどさまざまな危険性を指摘された北京オリンピックだが、どうやら無事に閉幕したようだ。
 日本人が「中国が好きだ、嫌いだ」と騒いだところで、しょせん隣国同士。人間同士のように、お互いが気に入らないからといって引っ越すわけにも行かず、良くも悪くも数千年というお付き合いをしてきたわけだ。しかし、その裏ではいろいろな問題が指摘されているので、大きなイベントが終わったところで、もう一度中国という国を検証し、投資家を含めた皆さんに問題提起をしたい。

 今回のオリンピックで、まずマスメディアの格好の話題になったのは、開会式の足跡花火と少女の歌声だ。オリンピックの幕開けとして、盛大な花火が打ち上げられたが、その中の足跡を形取った花火がCGだったと報道された。

 本物の花火の中にCGも混じって打ち上げられたのだが、テレビで見ていて感心していた全世界の視聴者は興ざめであったろう。

 また、少数民族の代表として、開会式でかわいい歌声をあげた少女は、「口パク」つまり吹き替えで歌っていたことがわかった。実際の美しい声の持ち主は、イマイチかわいくないということで、モデルのような容姿をした子が選ばれたらしい。そのうえ、少数民族と発表されていたが、実は大多数を占める漢族だったのだ。

 中国当局の発表では、これらすべての行為が演出に入るということだが、世界の常識からすると、間違いなく“偽装”である。そこには、謀らずしもバレたからといって、恐るべき詭弁を擁する、この国のしたたかさが感じ取れる。

目に入ると痛くてしょっぱい雨の正体は?

 今回の成功で、表向きには、一見“大中国”のメンツを保てたように見えたかもしれないが、よく観察するといろいろなところでほころびが見えてくる。

 前述の開会式で、「中国の五十六民族の代表」として登場した子どもの大多数が、漢民族であったこと判明したが、北京五輪組織委員会は、
「中国では多民族の服を着る演出はよくあることで、大した問題ではない」
とうそぶいている。

 そのうえ、一般の中国人までもが、
「少数民族の子どもなどは『偽装』とはいえず、外国の批判はあたらない」
 として、罪の意識どころか問題にもしていない。

 また北京では、五輪の開催期間中でも、3つの公園でデモが許可されるはずだったが、実際には一件も認められなかった。

 開会期間中の8月18日までに、149人が申請した77件のほとんどが、「交渉を通じて関係当局によって適切に処理されたため却下された」としている。ところが実際には、デモを申請した市民が「労働再訓練」など命ぜられて、懲罰的な処置がとられている場合も多いのだ。「おそるべし中国」というところだが、つまりそこまでして国威発揚をし、国の面子を保とうとしているのである。

 もう1つ、天気に関しても疑惑が指摘されている。普段なら、スモッグで500メートル先もかすんで見えるほど大気汚染の酷い北京だが、今回はほとんど問題にならなかったのはなぜか。開会期間中の自動車の交通量を大幅に規制したということもあるが、雨で汚染物を洗い流すために、人工雨を降らせているといわれていた。

大気汚染が心配される北京
北京

 実は、今年の4月に行われたマラソンの五輪テスト大会のときにも、人口雨を降らせていたのだが、本番でも同じ処理が行われたという。薬剤入りロケットを撃ち込んで雨を降らせて、事前に雨雲を消す「人口消雨」作戦を採用したと新華社通信が発表している。
 競歩に出場した日本人選手は、
「雨がしょっぱくて、目に入ると痛かった」
と述べていることからも、雨の不自然さが証明されている。

日本より進んだ監視体制が整備されている中国

 北京オリンピックは国威発揚と景気高揚のために行われたといってよいが、前者はともかく、本当に景気高揚に役だったのであろうか。(次ページへ続く)



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プロフィール
橘 尚人タチバナ ナオト

大学卒業後、生命保険会社や投信会社などいくつかの金融機関を経て、現在、外資系投信会社でマーケットアナリストを務める。これまで金融商品の企画・設定から市場の分析に携わり、各方面で実績を積み、高い評価を受けている。一方、格差社会の問題にも関心高く、小泉構造改革の矛盾点を鋭い視点から分析する異色のアナリスト。著書に「石橋は渡るな!‐爆騰狙いのハイリターン投資入門」(光文社ペーパーバックス)がある。


本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る


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