「名ばかり店長」「名ばかり取締役」など、いまや正社員も派遣社員も四面楚歌。「国際競争力の確保」という国家的目的のために、すべてを犠牲にして劣悪な労働条件で勤務しなければならない時代がきた。(バックナンバーはこちら



ついに登場した「名ばかり取締役」の衝撃

 最近残業代なしで、際限なく働かされる「名ばかり管理職」が問題になっている。外食大手のマクドナルドでは、「名ばかり店長」が本来支払われるべき残業代を請求して提訴した結果、支給されることになった。また後で触れるが天下のトヨタ自動車も「サービス残業」を奨励していた。いったい日本の企業に何が起きているのか。

 マクドナルドは、替わりに職務給を廃止して残業代の財源に充てることで、「残業代をゼロに近づけ、許可制にする」と発表したが、非難が続出したことで撤回することになった。結局、職務給は従来のままで、残業代のみ支払うことで収めるようだ。

 これまで、店長などという肩書きを付与して名ばかりの管理職として、残業代も払わずに労働奴隷のように働かせて利益を上げてきた企業側だが、その究極の業態として、ついに「名ばかり取締役」が登場した。

服を買いに若者が集まる裏原
「マクドナルド」ホームページより

 九州のとある県に住むAさんは、長年ゴルフガーデンに勤務していて、客とも良好な関係を保ちながら実績を上げていた。ところが、勤務先の株主が替わったとたんに、新しい経営者から、取締役支配人にならないかと勧められた。

 まだ、新しい企業側の実態がわからないAさんは一度断ったが、しつこく何回も誘われたので了解したところ、これまでとまったく同じ仕事であるにもかかわらず、残業代がゼロになってしまう。そのうえ、32万円あった給与も「管理監督者」ということで、基本給だけの25万円になってしまったのだ。

 労働基準法では、使用者が労働時間を把握して、時間外労働に割増賃金を支払うことを義務付けているが、「管理監督者」は除外されている。Aさんの場合も、会社側がここに目を付けて、肩書きだけの「取締役」として、残業代や住宅手当など手当金をカットしてしまったわけだ。

 これは、Aさん一個人だけの問題ではない。前述したマクドナルドや均一価格のコンビニチェーンとして急成長しているSHOP99などでも、同じケースがある。

 SHOP99の元店長、Bさんの場合は、入社からわずか9ヵ月で店長にさせられて、休日返上で働かされた上に残業代がなくなり、給与も29万円から21万円に減らされてしまった。

 厚生労働省では、管理監督者の資格を満たす要件として、
①経営者と一体的な立場
②出退勤が自由
③地位に相応しい待遇
などをあげている。しかし、前述した2つのケース、いやこれまで新聞などで報道されたほとんどのケースが、この要件にあてはまらないことは明白なのだ。

 これまでなら、「正社員になった」「店長になった」「取締役に昇進した」と喜んでいられたが、現在では、昇進すればするほど過酷な待遇が待っているといえるかもしれない。

 ではなぜ、こんな悲惨なことになってしまったのだろうか? それを探るには、10年以上も前に遡らなければならない。



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プロフィール
橘 尚人タチバナ ナオト

大学卒業後、生命保険会社や投信会社などいくつかの金融機関を経て、現在、外資系投信会社でマーケットアナリストを務める。これまで金融商品の企画・設定から市場の分析に携わり、各方面で実績を積み、高い評価を受けている。一方、格差社会の問題にも関心高く、小泉構造改革の矛盾点を鋭い視点から分析する異色のアナリスト。著書に「石橋は渡るな!‐爆騰狙いのハイリターン投資入門」(光文社ペーパーバックス)がある。


本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る


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