今年の漢字は「兆」
08年を表す漢字は「変」だった。たしかに変な年だったし、また大変な変化が起きた大変な年だった。08年の年初にはすでにサブプライムがらみの問題が出て来ていたにもかかわらず、サブプライムローン自体の残債がせいぜい10兆円台だったこともあって、年央からアメリカ経済は回復してくるという楽観論が大勢だった。
年初恒例の日経新聞による年度の高値予想は1万8000円どころに集中し、それも下半期という見方が主だった。最も弱気の見方でも1万4000円だったのだから、誰もこんなことになるとは露ほども疑っていなかったらしい。
ところが実際に起きたことはご案内の通りであり、年末には高くなるはずだった日経平均の、万の単位が無くなってしまって、ただの8000円台で年を越す始末。本当に市場とは厄介なところではある。
とくに10月には1日に5%以上もの乱高下が日常的に発生したのだから、統計に頼って作られていた金融工学がらみの金融商品はそんなことは想定していなかったために、破滅的な運用結果となり世界中が揺れてしまうという結果となった。

そうなると守りを固めるのは人間の常であり、当面必要なもの以外の出費は抑えてくるから、壊れない自動車などは真っ先に買い控えられ、さしものトヨタをはじめとする日本勢もこの影響を正面から受けざるを得なくなった。販売台数の落ち込みは恐らく日本どころか世界の自動車史上初めてという激しさである。
当初は金融だけの問題とされていたサブプライム問題も、いまや実体経済まで大きく揺さぶり、一部では世界大恐慌の再来という極端な悲観論が出て来るようなった。また「悪いニュースは良いニュース」が信条のマスコミにとっては、騒げば騒ぐほど売れるので、これでもかこれでもかと悪いニュースばかり流してくる。
バランスのとれた議論を
おかげで円高まですっかり悪玉にされてしまった。本当に円高はそんなに悪いのだろうか、といった論調にはまずお目にかからない。ところがものごとには必ずコインの裏表のような面があり、資源のない日本にとってはむしろ円高は歓迎すべき面も多いことは一切報じない。
考えるまでもなく日本のGDPに対する輸出依存度はせいぜい16~17%ぐらいなもの。一方円高になればそのほとんどを日本円で持っている日本国民にとっては、その価値が1.3~1.4倍に増えたのと同じなのだから、トータルでは得になっているだろうし、また輸入代金も少なくてすむのでその分可処分所得も増える計算になる。これは円高の明るい面なのだが、バランスのとれた議論がされないのはマスコミの悲観論好きのせいとしか思えない。(次ページへ続く)