東京・下北沢、本好き女性の古書店

古書店といえば、店主は男性というイメージもあるが、最近は若い女性が経営する店も増えている。2008年3月、東京・下北沢駅近くにオープンした古書店「ほん吉」の店主は、加勢理枝さん。もともと本が好きで、古書店に勤めた後、本屋を始めた。
加勢さんの本への愛着は深い。「私は、本がとても好きです。読むジャンルはさまざまですが、“印刷物を綴じてあるもの”がとにかく好きなのです」。店の奥にひっそりと貼ってある「ほん吉」のポスターには、書物を「実用に簡便、調査に堅実、娯楽にかるく、思考をゆるがせたるもの」と表現している。面白い。まったくその通りだ。
店の入口を抜けると、高い天井、壁は打ちっぱなしで、倉庫のような雰囲気さえ醸し出す。2~3万冊の本が並ぶ店内。古書店というと、哲学、社会科学、自然科学、文学、美術、洋書と専門分野を持つ本屋が多いが、加勢さんはジャンルにこだわらない。思想書、美術、女性史、映画パンフレットから料理の本まで幅広い分野の書籍が並ぶ。
「長く続けられる仕事をしよう」と古書店に就職

加勢さんは美大に進んだ後、キャラクターのフィギュアや雑貨を制作する会社に就職した。キャラクター雑貨の制作進行をマネジメントし、作家とデザイナー、制作工場をコーディネートする仕事をした。楽しい会社だったが、「50~60歳になるまで、私はこの仕事をずっと続けられるだろうか」と疑問を抱いた。「この業界で仕事を続けることは難しそうだから、転職しようかなあ」と思っている矢先、求人の貼り紙を見つけた。
それは、加勢さんがいつも通っていた古書店だった。迷った挙句、履歴書を送った。「応募が遅かったので、すでに別の人が決まっていましたが、『短期アルバイトなら』と雇い入れてくれました。それまで私はお客さん側だったので、古書店の仕事はどのようなことか知らず、『古書店の勉強できればいいなあ。長く続けられる仕事かどうかやってみよう』という軽い気持ちでした」
短期アルバイトとして働き始め、すぐに正社員になり、それから4年間勤務することになった。(次ページへ続く)