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天下のバラマキ政策の真実
定額給付金で「得する人」「損する人」

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2009/01/25 09:00

 公明党は、1999年に「バラマキ政策」と批判された地域振興券と同様に、生活対策として経済効果があるということで提案したのだ。

 10年前には、1人2万円ずつ(額面1000円の地域振興券を20枚)、6ヵ月間の期間限定で、景気対策として支給された。これによって、当時のGDPを年率0.1%(2000億円)ほど押し上げたとされているが、実はその実施にともなう事務経費などが1000億円ほどかかっているのだ。だから実際の効果は、半分の1000億円しかなく、さほど期待した効果が上がらなかったという印象が強いわけだ。

 今回も実際の給付作業を行う地方自治体では、困惑の度を深めて、対応に苦慮している。定額給付金の支給作業は、申請から確認書類の郵送でのやりとりを経て、世帯主の口座に振り込むのが、政府が示す基本パターン。この具体的な作業を行うのが地方自治体だが、いまからいろいろな問題点や不安が指摘されている。

 まずは、給付作業に要する人員の問題だ。ただでさえ、3月から4月は転入転出が集中して事務が煩雑になるにもかかわらず、定額給付金の支給時期が重なれば、新たな人件費と事務作業が増えて、混乱をきたすことになるのではという心配があるのだ。

 そのうえ確認書類が届かなかったり、宛先不明で返送されたりした場合はどうするのか。あるいは、病気や高齢などの理由で手続きができない場合も予想される。昨年の後期高齢者医療制度では、ある自治体は保険証を郵送した際に、数%にあたる件数が「宛先不明」で返送されてきたという。

1万2000円の支給実施で何百万円もだまし取られる皮肉

 他にもいろいろな問題が指摘されている。例えば、地域振興券を消費することで経済効果を期待されたにもかかわらず、あるアンケート調査では7割の人が貯蓄に回してしまったという。今回の定額給付金は、地域振興券と違って金融機関の口座に振り込まれるので、そのまま貯金してしまう可能性が高いという予測も成り立つのだ。

 また、総務省は、定額給付金の支給をよそおった「振り込め詐欺」や「個人情報の詐取」に注意するように呼びかけている。

具体的には、「定額給付金」に関して、
・市区町村や総務省などがATM(銀行・コンビニなどの現金自動預払機)の操作をお願いすることは、絶対にありません
・ATMを自分で操作して、他人からお金を振り込んでもらうことは絶対にできません
・市区町村や総務省などが、「定額給付金」の給付のために、手数料などの振込を求めることは絶対にありません
・現時点で、市区町村や総務省などが住民の皆様の世帯構成や銀行口座の番号などの個人情報を照会することは、絶対にありません

などと注意を喚起している。

 1万2000円を支給する制度に乗じて、何百万、何千万円をだまし取られる被害者が多発する可能性があるというのは、何とも皮肉な政策ではないだろうか。いずれにしても以前、何よりも恩恵を受けたはずの私たちが、前回の地域振興券について、あまり「ありがたかった」という記憶がないというのが、それほど経済効果が上がらなかったという証拠ではないだろうか。

定額給付金を強く推進する公明党の意図

 今回の定額給付金も、このときと同じ経緯を辿って導入されようとしている。


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著者プロフィール

  • 橘 尚人(タチバナ ナオト)

    大学卒業後、生命保険会社や投信会社などいくつかの金融機関を経て、現在、外資系投信会社でマーケットアナリストを務める。これまで金融商品の企画・設定から市場の分析に携わり、各方面で実績を積み、高い評価を受けている。一方、格差社会の問題にも関心高く、小泉構造改革の矛盾点を鋭い視点から分析する異色のアナリスト。著書に「石橋は渡るな!‐爆騰狙いのハイリターン投資入門」(光文社ペーパーバックス)がある。

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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