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「このままだとオリンピックが開催できない」
イギリスを飲み込む金融危機

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2009/03/04 09:00

 2012年にオリンピックを開催するロンドン。しかし戦後最悪の不況に陥っている状況に開催も危ぶまれる始末。北京オリンピックの閉会式では「4年後にロンドンで会いましょう」というメッセージが繰り返し流されていたが…。(バックナンバーはこちら)

ロンドン五輪は大丈夫か?

 アメリカ発の金融危機が世界を飲み込みつつある。日本ではあまり知られていないが、イギリスが直面している現状は国家破綻の可能性を秘めているほど深刻化している。

 ロンドンといえば、2012年のオリンピック開催地であるが、ヨーロッパ経済が絶好調の頃に計画された国際イベントも、この様子ではどうやら開催が危ぶまれる。昨年の北京オリンピックの閉会式で「4年後にロンドンで会いましょう」というメッセージが繰り返し流されたのがウソのような様変わりだ。

 ロンドン五輪委員会は70億ポンド(7兆円)と見積もられる予算を民活資金で集めると豪語したものの、すでに建設が始まった選手村に必要な5億ポンドの資金さえ調達できないという厳しい台所事情が続く。

 この選手村の建設資金を請け負っていた世界最大のショッピングセンター施設のオーナーであるウェストフィールドやレンド・リース、そしてこれらに投資してきた欧米のヘッジファンドは不動産価格の下落の影響で、資金繰りが悪化し、軒並みオリンピック関連事業から撤退を余儀なくされるありさま。メインスタジアムや水泳競技場の建設も資金不足で工事が滞っている。ロンドンのジョンソン市長も「このままではオリンピック開催ができない」と危機感を顕にする。

 今回の世界的な金融危機で最も不名誉な国家破綻という烙印を押されたのはアイスランドであった。同国では国民総生産(GDP)の10倍近くの資金をヨーロッパ各地から集めていたが、その主な運用先はイギリスであった。ロンドンの不動産などに投資された資金の3分の1はこれら海外マネー。金融危機が深刻化するにつれ、世界からロンドンに入ってくる資金は枯渇し、イギリスのポンドは史上最大の下落を記録することになった。2007年、1ポンドは250円台であったが、2009年1月末には118円と、1年半前の半分以下である。

通貨ポンドは米ドルと違い国際基軸通貨ではない

 イギリスの大手銀行、ロイヤル・スコットランド銀行はイギリスの経済規模の2倍に達する2兆ポンドもの債権を有している。すでに破綻寸前といわれているが、この債権の1割が不良化するだけでイギリス政府の国民健康保険の2年分が吹き飛ぶ計算になる。そのような事態になれば公的資金を注入し穴埋めを図らざるを得なくなるだろう。しかし、そのような税金投入は国家を再び財政破綻に追いやることになるに違いない。

 イギリスの通貨ポンドはアメリカのドルと違い国際基軸通貨ではない。すでにイギリス政府が抱える財政赤字は4000億ポンドに達しており、その対GDP比率は1976年にイギリスが財政破綻し、国際通貨基金(IMF)に救済を求めた当時より大きくなっている。そのためイギリス政府はこれ以上財政赤字を増やすことはできない。イギリス政府は国民の銀行預金を守るため、金融機関に対し公的資金を注入することで金融崩壊を防ごうと考えているが、そのために必要な資金調達の道はほとんど閉ざされてしまっている。なぜなら赤字国債の発行ができないからだ。

 最後に残された方法として中央銀行によるポンドの増刷を実行し、その資金で銀行が抱える不良債権を吸収することになりつつある。これはアメリカのFRBが実行している金融機関の救済策と同じ性格のものであるが、国際基軸通貨でないポンドの過剰発行は通貨破綻をもたらしかねない毒薬だ。

戦後、最悪の不況に突入

 イギリスの国立経済社会研究所の試算によれば、同国のGDPは2008年4月のピーク時から2.7%縮小し、すでに1990年代の景気後退期よりも激しい落ち込みを見せている。(次ページへ続く)


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