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紙幣を大増刷すると紙くずになる? 「中央銀行の国債購入」の行方

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2009/04/18 10:00

 2009年3月18日、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、今後6ヶ月で約30兆円分の米国長期国債を購入することを発表しました。その前の週には、英国中央銀行BOEが同様に国債の買い入れを発表しています。ご承知の通り、中央銀行の国債購入は、基本的には紙幣の印刷を意味します。これが今後どういう影響をもたらすかを考えてみましょう。(バックナンバーはこちら)

国債を買い始めた中央銀行

 3月に入り、FRBとBOEは正式に国債の購入を発表しました。また、日本銀行は以前から、ECB(欧州中央銀行)も事実上EURO建ての国債を引き受けていることから、これで4大通貨の中央銀行すべてが自通貨建ての国債を購入していることになります。

 紙幣発行権を持つ中央銀行の国債購入は、「国債という紙を受け取って紙幣を渡す」ことから、紙幣の印刷を意味します。実際にはさまざまな方法が取られており、即座に印刷というわけではありませんが、間違いなくこの方向に向かっていると理解できるでしょう。

各国とも財政が火の車

 中央銀行国債買い入れの目的は、国債の安定消化です。3月25日には、英国で満期40年国債の入札が札割れしました。札割れは国債の売れ残りを意味し、価格は下落、金利は上昇して経済に悪影響を与えます。

 景気の厳しい落ち込みと共に、各国政府は財政出動による景気対策や金融機関への資本注入などで歳出を増加させています。米国は予算教書の中で、09年度の財政赤字が約1兆7500億ドルと、08年度の約3倍になると予想しています。

 日本では、先日発表された補正予算を加えると、09年度は歳出が100兆円を突破すると予想されています。景気の落ち込みで歳入も減少しているので、増加する歳出は新規の国債の発行でまかなわれることになります。日本では歳入の内訳で、税収を国債収入が上回ると報道されました。国債の増発、そしてその国債の円滑な消化が緊急の課題となっています。

通貨スワップも通貨の印刷

 通貨の印刷は中央銀行の国債引き受けだけではありません。FRBが各国中央銀行と結んだ通貨スワップ協定も通貨の印刷を意味します。

 FRBは新興国のドル資金繰り不安解消のため、各国中銀と通貨のスワップ協定を結び、新興国の資金ショートリスクを押さえ込みました。例えば韓国中銀は、2008年10月29日300億ドルの通貨スワップ協定をFRBと結びました。それ以降、韓国中銀は、数十億ドルずつFRBからドルを引き出して、韓国国内の銀行に供給しています。

「ドルを引き出して」と書きましたが、正確には通貨のスワップです。韓国中銀が20億ドル分のドルを受け取れば、FRBはそれと等価の韓国ウォンを受けとっています。それぞれのお金の行方ですが、ここに問題があります。韓国中銀が受け取ったドルは市中に出回り使用されていきます。一方、FRBが受け取った韓国ウォンは何にも使われません。

 韓国の国債でも購入できれば金利がつくのですが、通貨スワップの金額に対してウォン建ての投資可能な市場がないためどこにも投資できず、いわば「タンス預金」となっています。実際には使えないモノを受け取りドル紙幣を供給しているということで、実質的な紙幣の印刷だと考えています。

紙幣は紙くずになるか?

 中央銀行の国債購入は、基本的には紙幣の印刷を意味します。「紙幣を印刷する」と聞いて懸念されるのは、紙幣が流通しすぎてその価値が落ちてしまうこと。印刷が過剰になれば紙くずになってしまう可能性もあるのです。(次ページへ続く)


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著者プロフィール

  • 課長 今調査役(カチョウ イマチョウサヤク)

    大学院で物理学を志すも途中、島耕作にあこがれ金融業界へ。本職は債券市場と計量分析のアナリスト(自称調査役)であるが、お金の流れを追う過程でマクロ経済、株式、商品、アセットアロケーションなどを学び、株の銘柄選択以外すべてに通じるマルチアセットアナリストとして、多方面で活躍(予定)。日本人として日本人の資産をいかに有効利用するかを生涯の目標とする。
    好きな言葉 「潮が引いたとき、誰が裸で泳いでいたかがわかる」

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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