財務諸表を分析するための道具
今回と次回の2回にわたって、財務諸表を分析するために使う財務指標について説明します。
財務諸表の見方について説明した本などの中には、初めから財務指標を使って財務諸表を分析してみせるものがあります。確かに財務指標を使って財務諸表を分析されると、何となく財務諸表がわかったような感じになります。しかし、それは財務諸表の表面を理解したにすぎません。
まず財務諸表の意味を理解してからでないと、財務指標を使った財務諸表の分析はあまり意味がありません。そのため、この連載では、これまで財務指標は使わず、まず財務諸表の意味を理解してもらえるように説明してきました。
財務指標は、財務諸表を分析するためのわかりやすく便利な道具なのですが、それによる分析だけで財務諸表を理解したと思ってしまうのは少し危険なので、注意してください(財務指標を使うことによって財務諸表の説明は上手く行うことができたのに、それに対する質問には上手く答えられないといったことに)。
まず今回は損益計算書を分析するための財務指標について説明し、次回に貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書を分析するための財務指標について説明します。
損益計算書を分析するための道具
売上高~利益率
損益計算書を分析するための財務指標として初めに説明するのは、「売上高●●利益率」です。「●●」を入れ替えると、売上高売上総利益率や売上高営業利益率、売上高経常利益率となります。これは、売上高に対する利益の比率を示すものです。

この比率が高いほど、会社は少ない費用で収益を生み出すことができていることになり、効率的な経営を行えていると言えます。会社は基本的に、収益をできる限り大きく、費用をできる限り小さくすることによって、利益をできる限り大きくするように活動しているのです。

これまで見てきた会社の売上高~利益率を比べると、上のようになります。やはり日本マクドナルドホールディングスの事業は薄利多売の典型と言えるため、その売上高売上総利益率は他の会社と比べてずっと低いです。なお、「薄利多売」の意味を正確に言うと、商品1つ当たりから得られる売上総利益の額が小さいので、多くの商品を販売し、売上総利益全体の額を大きくして、それによって販売費及び一般管理費をまかなうことでした。
また、営業外収益よりも営業外費用の方が大きい会社の場合は(借入金が多くて支払利息が多いといった理由のため)、当然、営業利益よりも経常利益が小さくなるため、売上高経常利益率も売上高営業利益率より小さくなります。売上高営業利益率は会社の営業力を示す指標であるのに対して、売上高経常利益率は会社の財務面も含めた力を示す指標であると言えます。
次によく耳にする「ROA」と「ROE」という財務指標について見ていきましょう。(次ページへ続く)