市場の動きの背景にあるものを考える
足元で、新興市場が活気づきつつある。デイトレーダーたるもの、このような変化に敏感でなくてはならない。この点については、第8回の当コラム(昨年8月26日)で、「下げトレンドが続き、多くの個人投資家が興味を失っている市場に対して、参加はしないけれど、常にウォッチし、エントリータイミングを計る努力をデイトレーダーはしなくてはならないのだ」と指摘しておいたので、実践した投資家は、ここ最近の新興市場のリバウンドでそれなりのパフォーマンスが得られたことだろう。
この表を見てもわかるように、売買代金は5月19日の184億円をボトムに、増加傾向を示している。27日には515億円にまで増加した。ボトムからは約2.8倍だ。それまでの売買代金は、概ね200億円~300億円程度で推移したことを考えれば、遅くとも、400億台に乗せた26日には、「これはなんか、今までと違う。我々と同類の短期トレーダーが流入し始めた可能性が高いな」と判断しなくてはならない。
ところで、デイトレーダーは、そのようなボリューム変化をチェックすると同時に、この背景も自分なりに予想するべきだろう。それが当たる、外れるかが重要なことではない。その予想を前提に、新興市場の反発が短期で終わるのか、それとも、やや長い期間の上昇になるかの前提を自分なりに考えるのだ。そのような訓練をすることは、今後、同様の状況が起こった時、必ず役に立つと思う。投資をする際に、最後に頼りなるのは自分自身しかいないのだから。
そこで今回は、最近の新興市場の変化を例に、3つの仮説を立ててみよう。
(1)「中小企業の資金繰り支援策の拡充」がもたらした?
5月29日、追加経済対策の裏付けとなる09年度補正予算が成立した。中小企業の資金繰り支援策としては、各地の信用保証協会による緊急保証制度の保証枠を従来の20兆円から30兆円に拡大した。ちなみに、昨年10月の制度開始から29日までの承諾実績は10兆8,000億円だ。また、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫による低利融資「セーフティネット貸付」も、融資枠を10兆円から15兆4,000億円に増やしている。
このような中小企業の資金繰り支援策の拡充をみて、デイトレーダーは、ピンとこなくてはならない。同様の対策としては、日本が金融危機に見舞われた、1998年10月1日から実施された信用保証協会の「中小企業金融安定化特別保証制度」がある。この保証制度では、借りたカネを本来の目的とは別に、高級外車、投資用不動産、そして、株式の購入資金に回すケースが多かったとされている。そしてこの制度が、ITバブル発生の要因のひとつになったとみられているのだ。つまり、政府による資金繰り支援策で、市中にばら撒かれたカネが、投機性の強い新興市場に流入を始めた可能性があるのだ。(次ページへ続く)