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「官製バブル」の行方 中国経済の回復は本物か

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2009/07/19 09:00

 中国の株式市場が堅調に推移しています。実態経済では、公共事業を中心とした内需を中心に、企業の景況感や生産が回復しています。今回はこの中国の回復が本物かどうか、検証していきます。(バックナンバーはこちら)

中国の「バブル崩壊対策」

 2008年他の先進国と同様に、中国でも株式や不動産といった資産バブルの崩壊に直面しました。資産バブル崩壊への対応として、中国が参考にしたのは日本の経験でした。

 日本のバブル崩壊の経験で、重要なことが1つあります。それは不動産と株式あわせて数百兆円という資産を失ったにも関わらず、日本のGDPは減少しなかったということです。

 日本政府は、資産を失う過程で減少した需要を補うため、公共事業を中心とした景気対策を実行しました。しかし、数度にわたる大規模な景気対策にもかかわらず、民間の需要は大きく改善せず、政府の支出は増え続け膨大な財政赤字を残してしまいました。

中国政府は、「GDPが減少せず国民の生活を守った」という大きな成功と、大きな財政赤字を残してしまっているという大きな失敗を、日本の経験から学びました。中国の財政赤字はほぼゼロであり、今すぐ財政赤字の心配をする必要ないため、GDPを減少させず国民の生活を守るために、中国政府は今後公共事業をさらに拡大させていくと考えています。

公共事業の乗数効果は?

 景気対策といえばまず真っ先に出てくるのが公共事業ですが、それには2つの理由があります。
1つ目は、直接需要につながり即効性があることです。10兆円の景気対策を考えた場合、減税では10兆円のうち何割かは貯蓄に回ってしまうため、即効性のある経済刺激効果は残りの分となりますが、公共事業の場合、10兆円すべてがその年度内に支出され、需要創出という形で経済活動に反映します。

 2つ目ですが、経済学の言葉で「乗数効果」が高いといわれているからです。先ほどと同様の例で考えると、10兆円の公共事業を行った場合、10兆円の事業の発注はさまざまな経路を辿り、経済活動全体へと浸透していき、経済を活性化させていきます。その「経済の活性化した金額」を10兆円で割った金額を乗数効果といいます。公共事業の場合、セメントや鉄材などの原材料から、電気配線などの内装、交通規制をする警備員まで、関連する多くの業種が恩恵を受けることから、乗数は1を上回ると想定されています。

 ところが、日本の現実を振り返ってみると、さまざまな問題が浮き彫りになります。例えば田舎の山の上に、誰も訪れることのないハコモノ施設を作ったらどうなるか? たしかに瞬間的な乗数は 1 を上回りますが、その後の施設の維持管理費などを考慮すると、明らかに1を下回ります。

 それでは地方に道路を作ったらどうなったか?
地域の車社会化を加速し、郊外の大型スーパーへのアクセスが容易になったため、地元の商店街が壊滅したというケースが多くあります。この場合も、乗数は1を下回るでしょう。公共事業では、その効果の有効性が大切なポイントとなります。

 中国で行われている公共事業はどうでしょうか?今現在の公共事業は、地下鉄、鉄道、高速道路などのインフラ投資を中心に行われています。通勤時間帯渋滞が激しかった地域に地下鉄ができる、10時間かかっていた都市間の移動が高速鉄道により2時間で結ばれるなど、インフラが未発達な中国で行われる公共事業の乗数効果は非常に高いものであると想定できます。

 中国は、バブル崩壊への対策と未来へのインフラ投資という2つの政策を同時に行っていると考えることができます。

中国経済の回復は本物か?

 回復が報道されている中国経済ですが、回復は本物なのでしょうか?(次ページへ続く)


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著者プロフィール

  • 課長 今調査役(カチョウ イマチョウサヤク)

    大学院で物理学を志すも途中、島耕作にあこがれ金融業界へ。本職は債券市場と計量分析のアナリスト(自称調査役)であるが、お金の流れを追う過程でマクロ経済、株式、商品、アセットアロケーションなどを学び、株の銘柄選択以外すべてに通じるマルチアセットアナリストとして、多方面で活躍(予定)。日本人として日本人の資産をいかに有効利用するかを生涯の目標とする。
    好きな言葉 「潮が引いたとき、誰が裸で泳いでいたかがわかる」

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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