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【財務諸表が読める・わかる】 不況のなか黒字を達成したスズキの財務諸表を見る

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2009/08/11 09:00

 スズキはある意味トヨタ以上の自動車メーカーと言えるかもしれません。他社が業績を落としている中、前期に比べて、売上、利益ともに減少したものの、黒字を達成しました。この会社の財務諸表はどうなっているのでしょうか。(バックナンバーはこちら)

スズキの財務諸表の特徴は?

 今回見て頂くのは、スズキ株式会社(証券コード:7269)の平成21年3月期(平成20年4月1日~平成21年3月31日)の財務諸表です。この会社は、ご存じのとおり自動車メーカーです(オートバイなども作っていますが、メインは自動車)。

 なぜ自動車メーカーのうちこの会社を選んだかというと、筆者が「スズキ」姓だからというわけではなく、自動車メーカー全体の業績がかなり悪化しているなか、この会社は持ちこたえているようだからです。

 あのトヨタ自動車でさえ、平成21年3月期は赤字だったのに、この会社は、前期に比べて、売上、利益ともに減少したものの、黒字を達成しました。その点が気になったからです。

スズキの損益計算書を見る

 それでは早速スズキの損益計算書を見てみましょう。

 まず売上高3,004,888百万円に対して売上原価が2,315,958百万円で、売上総利益は

売上高3,004,888百万円-売上原価2,315,958百万円=688,930百万円

となり、売上高売上総利益率(売上総利益/売上高×100)は22.9%です。前回見た日本綜合地所の25.2%よりも低い比率ですが、マンションより自動車の方が多く販売できそうなので、より原価に近い価格に下げて売上高売上総利益率を低くしても大丈夫そうです。

次に販売費及び一般管理費が612,003百万円発生し、営業利益は、

売上総利益688,930百万円-販売費及び一般管理費612,003百万円=76,926百万円

となり、売上高営業利益率(営業利益/売上高×100)は2.6%と、売上高売上総利益率よりもずっと低い比率になりました。販売費及び一般管理費のうち最も額が大きいのは研究開発費で、114,961百万円です。新しい性能の自動車を開発し続けなければならないからです。次に額が大きいのは広告宣伝費79,668百万円や販売促進費74,668百万円です。自動車の宣伝を目にしない日はほとんど無いかと思います。

 この会社の売上高は前期と比べて14.2%減少しました。売上が減少しても利益を出そうとすれば、当然費用を減らさなければなりませんが、売上原価の削減は簡単ではありません。自動車を作る材料を減らすわけにもいきませんし、その質を下げるわけにもいかないでしょう。そこで先ず考えるのは販売費及び一般管理費の削減です。

 しかし、販売費及び一般管理費の中の費用を一律に減らすべきではありません。この会社も、販売費及び一般管理費を前期721,134百万円から当期612,003百万円へと減らしているのですが、その中の費用をすべて減らしているわけではありません。

 広告宣伝費などは前期よりも減らしていますが、研究開発費は逆に増やしています。自動車が売れない現時点において広告宣伝費などを減らすのはやむを得ないとしても、研究開発費は将来販売する自動車を生み出すための費用なので、それを減らすのは命取りになってしまうのです。

 なお、売上高が減少したと言いましたが、その原因は、他の自動車メーカーと同様、海外に対する売上の減少と円高の進行です。この会社の売上の67.9%は海外に対するものなのですが、海外に対する売上の割合が大きい会社の場合、円高が進むと、売上が減少してしまいます。例えば、円高が進み、1ドルが150円から100円になった場合、1万ドルで販売している自動車の売上は150万円から100万円になってしまいます。この会社にとって、海外に対する売上の減少と円高の進行はダブルパンチでした。

 ただし、この会社の売上の減少は他の自動車メーカーほどではありませんでした(トヨタ自動車は21.9%の減少)。アジアに対する売上の割合が高いからです。北米や欧州では自動車の売上が減っているのですが、アジアではあまり減っていません。

 他の自動車メーカーは北米や欧州に対する売上の割合が高いため、売上の減少が大きかったのですが、この会社はアジアに対する割合が高いため、売上の減少を抑えることができたのです。自動車メーカー全体の業績がかなり悪化しているなか、この会社が持ちこたえて黒字を達成できたのは、売上の減少を抑えることができ、かつ、販売費及び一般管理費を上手く削減することができたためのようです。

 営業外収益と営業外費用を見ると、営業外収益の方が営業外費用よりも大きく、経常利益は、

営業利益76,926百万円+営業外収益48,135百万円-営業外費用45,386百万円=79,675百万円

となり、売上高経常利益率(経常利益/売上高×100)は2.7%と、売上高営業利益率よりも少し高くなりました。営業外費用の中の支払利息の額はそれほど大きくありません。ただし、株式相場が良くないせいか、有価証券評価損の額が少し大きくなっています。また、関連会社の業績も良くないため、持分法による投資損失が発生しています。

 特別利益と特別損失も、特別利益の方が特別損失よりも大きく、税金等調整前当期純利益は、

経常利益79,675百万円+特別利益1,482百万円-特別損失1,052百万円=80,105百万円

となり、経常利益よりも小さくならずに済みました。そして、税金等調整前当期純利益から税金と少数株主利益を引くと、当期純利益27,429百万円となります。なお、前回説明した税効果会計により、ここでは、法人税、住民税及び事業税24,651百万円に法人税等調整額15,348百万円を足して、利益に対応する額である法人税等合計39,999百万円に調整しています。(次ページへ続く)


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