原油相場と日経平均
一般に、株価は景気の先行指標であり、コモディティ価格は景気の一致指標であると考えられてきました。しかしながら、最近では両者の相関が高まっているのではという見方もあります。これは、原油・金などのコモディティ相場が分散投資の対象として広く認知され、従来は株式や債券に向けられてきた投資資金の一部がコモディティ投資にも向けられるようになってきたためと考えられます。
さらに、原油を始めとするコモディティ相場は物価全体に大きな影響を与え、あまりに急激に上昇すれば景気を冷やしかねません。過去の原油価格急騰後に景気が急激に落ち込んできた原因の一つにはこの「物価上昇」→「景気冷え込み」という流れも影響を与えていると考えられます。
そこで、今回は、以下の点を明確にするため、2000年1月から2009年6月までの日経平均とWTI原油価格(円換算のスポット価格)について月次データを調べて見ました(出所:ロイター)
・株価は原油価格に先行するのか?
・最近は株価と原油価格の相関が上がっているのか?
・原油価格の変動はその後の株価に影響を与えるのか?
日経平均とWTI原油相場の相関
2000年からの相関をみると、日経平均とWTI原油相場は正の相関があるものの、それほど高いわけではありません。また、日経平均が先行して動いていたかどうかを見るために、3ヶ月前と6ヶ月前の日経平均と、WTI原油相場の値動きを見たところ、3ヵ月前には正の相関が若干あるものの、6ヶ月前では“おそらく関係なし”という結果でした。

また、最近の動向に違いがあるかどうか見るため、2005年からのデータでも同様に調べて見ました(下表)。すると、同じ月、3ヶ月前の日経平均のともに相関が大きく上昇していることがわかりました。なお、6ヶ月前の日経平均とは関連は薄いものの負の相関になっていました。

これらの結果から、以下のことが言えると思われます。
・日経平均とWTI原油価格の相関が近年上昇している
・株価が3ヶ月前後原油価格に先行する傾向もやや強くなっている
WTI原油相場は日経平均の先行指標となったのか?
次に、WTI原油相場が日経平均に先行していたかどうかという視点でも調べてみました。
2000年からのデータでは無相関という結果でしたが、2005年からのデータでは、日経平均は3ヶ月前のWTI原油価格とは正の相関、半年前のWTI原油価格とは負の相関があったという興味深い結果が出ました。つまり、関係はそれほど強くないものの、原油価格が上昇(下落)すると半年後の日経平均は下がる(上がる)可能性があるということになります。

投資に活かすなら
今回、必ずしも普遍的な結果を得られたとは限りませんが、おそらく以下の様なことがある程度いえるのではないかと思われます。
・(関係は強いとはいえないが)日経平均はWTI原油価格に先行している可能性がある
・日経平均とWTI原油価格の相関は近年上昇している
・(関係は必ずしも強くは無いが)原油価格の上昇(下落)が半年前後先の日経
平均を下げる(上げる)方向に作用している可能性がある
(注)景気への原油価格の影響については、変化率に加えて絶対的な水準が影響を与えているという考え方もあります。また、異なる期間のデータで調べると異なる結果が出る可能性があります。
投資に活かすのであれば、例えば、日経平均が下落して原油価格が上昇する局面は要注意なのではないかと思われます。株価をコモディティ価格の先行指標と考えるなら原油価格下落の可能性があります。一方、原油価格上昇が株価下落を招くとするなら株価一段安となることも考えられます。いずれにしろ買いポジションを手仕舞い、プットを購入することが有効となる可能性があります。
逆に、日経平均が上昇して原油価格が下落している局面では、将来の原油価格の上昇か、株価の下支えが期待できる可能性があり、原油相場か日経平均を対象としたトラッカーまたはコールの利用局面となる可能性があると考えられます。
さて次に投資で日経平均のリターンを上回る方法について考えてみましょう。(次ページへ続く)