手を結んだ米国と中国
ここ数ヶ月、米国と中国が急接近しています。お互いどのような事情があり、どのようなメリットがあって接近しているのでしょうか。それぞれの事情を解説していきます。
現在米国は、国内経済の建て直しに全力で当たっています。代表的な政策として、下落を続ける不動産市場をサポートするために、政府系金融機関を支援し住宅ローン金利を下げること、減税により消費者を支援することなどが挙げられます。いずれの政策も多額の財政支出を伴っており、景気悪化による税収減も加わり、2010年の米国財政赤字は大幅に拡大する見通しとなっています。
その財政赤字は国債の発行によって補填されるのですが、その国債の購入先として期待されているのが中国です。
中国は現在でもダントツ第1位の米国債投資家であり、中国が米ドルと米国債の動向を決めるといっても過言ではありません。米ドルの安定、米国債金利と住宅ローン金利の安定を目指す米国政府にとって、米国債最大のお客様と手を組めるのは願ってもないことであると同時に、必要不可欠なことなのです。
元高が困る中国
現在、中国にとっての一番の問題は、国内経済、とくに沿岸部の輸出産業の支援です。長年中国の経済成長を支えてきた沿岸部の輸出産業ですが、中国元の切り上げ、労働コストの上昇で苦しんでいた所にサブプライム危機による世界経済の急減速が直撃し、大きな打撃を受けています。
輸出産業を支援する1つの方法は、「通貨安」政策です。サブプライム危機で通貨が暴落した韓国が危機からいち早く回復しているように、通貨安は輸出産業に対して大きくプラスの影響を与えます。
長年、中国は輸出産業を育成するために、通貨「元」を米ドルに固定する政策を採ってきました。ところが、「元」が安く保たれ続け中国の輸出産業が非常に強くなりました。その偏りを是正しようと「元安」政策に対して異議を唱えていたのが米国でした。「元高」を求めていた米国に、「元安」を認めさせることが中国の狙いのひとつなのでしょう。
「元安」容認はほとんどイコール米国債購入
ここで、「元安」容認はほぼ米国債購入を意味します。中国に投資したい人は、米ドルを中国元に交換する必要があるのですが、通貨の交換は政府が決めたレートで行われるため、需給のバランスのずれは政府が負担しています。
中国元を求める人が多い場合、政府は米ドルを渡すよりも受け取る方が多いため、政府には米ドルが貯まっていきます。基本的に高成長国である中国は資金の流入が多いため、為替レートを固定する政策は米ドルの外貨準備の増加という結果を招きます。
貯まった米ドル建て外貨準備はどうなるかというと、タンス預金をするわけではありませんので、直接なり金融機関経由なり、国債を中心とする米ドル建て安全資産に投資されることになります。最近IMFからSDR建ての債券を購入するという話など、外貨準備を分散する動きを最近見せていますが、大勢に影響はないと考えています。中国は「元安」容認、米国は国債安定消化、それぞれにとって大きなメリットがあるのです。
とばっちりは周辺国へ
米国と中国が手を結ぶということはいったい何を意味するのでしょうか? 2つの超大国が手を結び落ち着きを取り戻す一方、そのとばっちりは周辺国が受けています。(次ページへ続く)