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豪州の緊急利上げで浮き彫りになった課題
「バブルのトラウマ」と「おせっかいな中央銀行」

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2009/10/12 10:00

 10月6日、オーストラリア中央銀行(RBA)は、政策金利を3.0%から3.25%へ引き上げました。利上げの背景には、不動産バブルのトラウマがあり、今後同様に利上げに踏み切る中央銀行が増加するものと考えています。(バックナンバーはこちら)

予想外の利上げに踏み切ったオーストラリア中央銀行

10月6日、オーストラリア中央銀行(RBA)は、政策金利を3.0%から3.25%へ引き上げました。予想外の利上げであり、高金利通貨への期待が再び過熱しオーストラリア・ドルが上昇しています。いったい利上げの背景に何があったのでしょうか?

 オーストラリアが利上げを開始した理由に、「緊急避難的な低金利の解除」があります。資源輸出国であり「金融」への依存度の低いオーストラリアは、世界的な経済危機の中、最も傷の浅い国の1つでした。

 経済危機後もアジア地域の強い需要に支えられ、オーストラリア経済は力強く回復しているようです。10月8日に発表された9月の失業率は、先月から0.1%低下して5.7%となりました。同時に雇用が大きく回復されているのが確認されました。RBAの利上げはこれら数字を考慮した「緊急措置の解除」と言えるでしょう。

加熱する住宅市場

 利上げの発表と共にRBAが出した声明には、加熱する住宅市場への懸念が表明されていました。オーストラリア政府は経済危機を受けて、景気刺激策の1つとして住宅購入補助制度を導入しました。

 新築物件購入に対して$21000(約180万円)、中古物件購入に対して$14000(約120万円)支給するという大掛かりなもので、利下げにより史上最低水準まで低下した住宅ローン金利と合わせて、住宅市場が一気に加熱しました。

 APM (Australian Property Monitors)によると、2009年第2四半期のみで、住宅価格はシドニーで3.7%、メルボルンで5.8%、国全体でも3.3%、地域によっては11%上昇したと報告されています。年率にすると10%以上の上昇で、不動産バブル時並の上昇率となっています。

 政策の影響が不動産価格の上昇要因の1つであるものの、今回の危機の原因としての不動産価格の影響を考えると、中央銀行は不動産市場の暴騰を看過できなかったと考えています。

資産バブルとの戦いは中央銀行の役目か?

 従来の中央銀行の役目は、少し前に「インフレ・ターゲット論」が議論されたように、インフレ率を適切にコントロールするというものでした。

 実際2000年以降資産価格が大きく上昇する局面においても、FRB(米国)、ECB(欧州)、BOE(英国)など各国中央銀行はそれを問題視することなく、インフレ率のみに注目した金融政策を執りました。米国や英国のみならず、欧州ではアイルランド、スペインを中心に不動産ブームと好景気に沸きかえっていたのは記憶に新しい所です。そのようなブームの中、インフレ率が安定していたため、中央銀行は利上げを行ないませんでした。

 不動産ブームが一気に冷え込んだ今から見ると、不動産価格の上昇が大きかった地域ほど大きな打撃を受けています。インフレ率が安定していたため政策金利を低く設定し過ぎたとして、中央銀行はバブルの発生を放置したと非難されています。バブルと中央銀行の役割は、非常に難しい問題です。

資産バブルに対する中央銀行の考え方

 資産バブルを防げなかったという非難に対し、中央銀行側もいろいろ苦慮していることが中銀幹部の反応から読み取ることが出来ます。(次ページへ続く)


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著者プロフィール

  • 課長 今調査役(カチョウ イマチョウサヤク)

    大学院で物理学を志すも途中、島耕作にあこがれ金融業界へ。本職は債券市場と計量分析のアナリスト(自称調査役)であるが、お金の流れを追う過程でマクロ経済、株式、商品、アセットアロケーションなどを学び、株の銘柄選択以外すべてに通じるマルチアセットアナリストとして、多方面で活躍(予定)。日本人として日本人の資産をいかに有効利用するかを生涯の目標とする。
    好きな言葉 「潮が引いたとき、誰が裸で泳いでいたかがわかる」

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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