金融危機から1年経過した中東経済の現状
オイルマネーの恩恵を受けていた中東も、世界金融危機の影響を受けて、株式市場が低迷したり、不動産価格が下落したりするなど、きびしい状況に置かれていました。
しかリーマン・ショックから約1年が経過し、いま世界経済は回復へ向かいつつあります。UAEにしても2009年GDP成長率は2~3 %程度になり、08年の7.4%からかなり低下すると予想されていますが、現在は景気刺激策の効果もあって他国と同様に回復傾向にあります。UAEの経済省は、2009年第4四半期もしくは2010年より成長軌道に乗るだろうと発言しています。
F1アブダビGPが初開催 ホテルの下にサーキットを建設
回復へ向かって歩き出した中東経済に追い風が吹こうとしています。というのもF1アブダビGPが今年11月1日に初開催されるからです。
新興国はF1の誘致を国家プロジェクトとして取り組んでいます。たとえば、シンガポールはアブダビより一足早く2008年から開催しており、F1初のナイトレースで世界中から注目を集めました。
世界各国のサーキットにはそれぞれ特徴があり面白いですが、アブダビGPではF1マシンがホテルの下のヤス・マリーナ・サーキットを時速300kmで走り抜けます。
レース用に整備されていない公道で夜にレースをするのは危ないという声もありますが、ライトアップされて輝く市街地をF1マシンが走るのはとてもエキサイティングです。F1は世界的なモータースポーツであり、中継でシンガポールの夜景が世界に配信され、観光都市としての魅力をアピールできるイベントです。

『F1経済効果調査報告書』によると、2004年アテネ五輪の経済効果は4,072億円、2006年FIFAワールドカップ・ドイツ大会は2,241億円、2005年F1トルコグランプリは220億円でした。F1は1戦あたり3日程度で、年間18戦ほどありますので、年間の経済効果としての試算は約4,000億円にのぼります。
オリンピックやワールドカップは4年に1回の開催ですが、F1では数年間同じサーキットを使うので、長期にわたって経済効果が発生します。また、数字ではかることのできない効果もあります。F1は特に欧州で人気があり、F1を開催しているというブランド力は、観光客を引きつけるのに十分です。知名度やイメージアップも期待できます。
完成前から全室予約済みのヤス・マリーナ・ホテル
F1効果の1つがサーキット周辺のインフラの整備です。今年は5ツ星ホテルの豪華ホテルが完成しました。(次ページへ続く)