もはや安全資産ではない
金融の教科書では、最も安全な資産「無リスク金利」から始まり、無リスクの資産として「国債」が出てきます。ところが、金融工学の発達により「国債」が安全資産として扱われなくなっています。
ギリシャの財政危機がニュースで報じられていますが、いったいどれほど危ないのでしょうか? それを示す指標が「ソブリンCDS」です。
ソブリンCDSとは、100円の国債を他の人に保証してもらうときに支払う「保証料」です。直近のギリシャの場合、100ユーロのギリシャ国債を保証してもらいたい人は、保証してもらう人に年間約2.8%(280bp)の保証料を払う必要があります。
ギリシャのCDSは、格付け機関による格下げや財政問題などが報道され始めた11月上旬より上昇を始め、ギリシャ国債が大きく売られた12月に一気に上昇しました。その差は他のユーロ諸国と比べると一目瞭然です。
国債の利回りより日本のソブリンCDSが高い?
日本のソブリンCDSも同様に市場で取り引きされています。ところが、そのソブリンCDSの利回りが日本の国債の利回りより高いという不思議な現象が起きています。
100円お金を持っている人を考えましょう。次ページの表にあるように、現在その100円を使って満期5年の国債を買うと利回りは0.6%です。ところが、その100円を元手 に他人の持っている日本国債を5年間保証する契約を結ぶと、0.7%の保証料が受け取れます。自分で国債を買うより、他人の持つ国債を保証すると利回りが高くなる という不思議な現象です。
教科書を読むと、国債の利回りには将来の政策金利の期待値と、信用リスクなどのリスクプレミアムが含まれていると書いてあります。その国債の利回りがソブリンCDSより高いとはどういうことでしょうか?(次ページへ続く)