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トヨタの方が日本より安全という事実
債券市場で生じている大変革の中身

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2010/01/17 14:00

ギリシャ、日本など世界中の国で財政赤字の拡大が議論されている。国債のデフォルトリスクが意識され、債券市場に大きな変革が起きようとしている。  

もはや安全資産ではない

 金融の教科書では、最も安全な資産「無リスク金利」から始まり、無リスクの資産として「国債」が出てくる。ところが、金融工学の発達により「国債」が安全資産として扱われなくなっている。

 ギリシャの財政危機がニュースで報じられているが、いったいどれほど危ないのだろうか。それを示す指標が「ソブリンCDS」だ。

 ソブリンCDSとは、100円の国債を他の人に保証してもらうときに支払う「保証料」。直近のギリシャの場合、100ユーロのギリシャ国債を保証してもらいたい人は、保証してもらう人に年間約2.8%(280bp)の保証料を払う必要がある。

 ギリシャのCDSは、格付け機関による格下げや財政問題などが報道され始めた11月上旬より上昇を始め、ギリシャ国債が大きく売られた12月に一気に上昇した。その差は他のユーロ諸国と比べると一目瞭然だ。

(図をクリックすると拡大)

国債の利回りより日本のソブリンCDSが高い?

 日本のソブリンCDSも同様に市場で取り引きされている。ところが、そのソブリンCDSの利回りが日本の国債の利回りより高いという不思議な現象が起きているのだ。

 100円お金を持っている人を考えてみよう。現在その100円を使って満期5年の国債を買うと利回りは0.6%だ。ところが、その100円を元手 に他人の持っている日本国債を5年間保証する契約を結ぶと、0.7%の保証料を受け取ることができる。自分で国債を買うより、他人の持つ国債を保証すると利回りが高くなる、という不思議な現象が生じているのだ。

 教科書を読むと、国債の利回りには将来の政策金利の期待値と、信用リスクなどのリスクプレミアムが含まれていると書いてある。その国債の利回りがソブリンCDSより高いとはどういうことなのだろうか。

日本の次の利上げは5年後か

 「国債の利回り= 政策金利の期待値 + リスクプレミアム」であるとすると、国債の利回りからリスクプレミアムであるソブリンCDSを引くと、「政策金利の期待値」を取り出すことができる。

(図をクリックすると拡大)

 実際に日本国債の利回りからソブリンCDSを引いて見ると、政策金利の期待値は5年先まで小幅なマイナスとなる。つまり、「利上げはまったくない」という評価になるのだろうか。

 通常の政策金利の予想は、ソブリンCDSを考慮しない国債の利回りを使用して計算するため、国債の利回りをソブリンCDSで調整するかしないかで大きな差が出てくる。「国債を安全資産ではない」と考えることにより、従来とは大きく異なった結果が出てくるのだ。

トヨタと日本、どちらが安全か

「国債は安全でない」とすると、一般企業と安全性を比べる必要が出てくる。さて、日本で一番信用力のある企業であるトヨタの社債と、日本国債、どちらが安全だろうか。

 まず国債だが、国債はある意味間違いなく安全資産だ。国には徴税権があり、国債の償還が危うくなればお金を刷ることもできるため、100円で発行された国債は絶対に100円で償還される。ただ実際に国がそのような行動をとった場合、インフレや通貨暴落が同時に発生することが予想される。償還された100円の国債の価値は、発行された時の100円に比べてはるかに見劣りし、実質的に目減りしてしまうことを認識しておく必要があるだろう。

トヨタは日本より安全。だだし・・・

 多国籍企業にとって、1つの国の財政破綻は企業の存続や社債の償還と直接の関係を持たない。とくにトヨタほどの資金力のある会社の社債は、今後5年は核戦争でも起きない限り安全だ。基本的に企業は国籍とは無縁の存在であって、その気になれば本社を他の国へ移すことも可能だ。他の国でビジネスを行なっており現地で資金を調達することもできる。

 100円で発行されたトヨタの社債は、間違いなく日本国債よりある意味安全で100円で償還される。ただ、円という通貨で発行された場合には、日本に何か悪いイベントが発生した場合、日本国債と同様、結局大きく目減りしてしまう。

通貨「円」の信用リスクをヘッジしたトヨタの社債を求む

 国よりも安全な多国籍企業がある世の中では、国債より安全な資産に投資したいという欲求が出てくる。ただ、特定の通貨を指定して債券が発行される限り、その国の信用リスクから逃れることができない。

 そこで、ぜひトヨタなどの多国籍企業には、発行する特定の通貨の持つリスクをヘッジした債券を発行してほしい。通貨のリスクとは、通貨の大量発行によるインフレ、新通貨発行によるデノミなどだ。

 これら考えうる通貨リスクを社債の償還条項として折込み、通貨リスクから切り離すことによって、企業は日本国債よりも低い企業の信用力に見合った利回りで資金が調達できるのではないだろうか。

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