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インドが目指す「原子力超大国の座」
ヘッジファンドが群がり原発メーカー株急騰

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2010/03/06 10:00

原子力発電という新たな産業が世界の注目を集める中、インドでは国家プロジェクトとして原子力発電に邁進。原子力ビジネスへの投資が活発になっている。

原子力エネルギーの新たな世界的リーダーを狙うインド

 経済成長の著しいインドは原子力発電の新興市場としても世界の注目を集め始めている。インドは2020年までに、2万メガワットの発電量を目標としている、と言われていたが、最近では各国と原子力協定を結べたことから、「2032年には6万3千メガワットにまで発電容量を拡大させる」と目標値を高めたようだ。

 現在のインド政府の目標では、「2050年までに、電力需要の25%を原子力発電でまかなう」とされている。これまでインドは核不拡散条約を署名していなかったために、過去34年間に渡り、原子力発電所建設に必要な核関連物質の輸入ができない状況が続いていた。

 そのため、2009年までは民間の原子力エネルギー開発には大きな障害が横たわっていたのである。さらに言えば、原子力発電に欠かせないウラニウムが国内では産出できないため、トリウムを使った独自の核燃料サイクルを開発してきた。

 しかも、そうした制約を克服するため、世界とは一線を画した核開発の専門家の養成に力を注いできたようだ。いわば、インドは原子力エネルギーの新たな世界的リーダーになることを国家目標として掲げているといっても過言ではない。

インド国内の電力需要は2020年までに3倍に急増も

 BRICsの一翼を担うインドでは、このところ7%近い経済成長を遂げており、電力需要がウナギ登りに増えている。2002年は5340億キロワットアワーと、1990年と比べれば2倍に電力需要が拡大している。とはいえ、一人頭で換算すれば、505キロワットアワーに過ぎない。さらに2006年のデータによれば、7440億キロワットアワーにまで拡大している。

 しかし、インド特有の問題もある。それは送電ロスが極端に大きい、ということである。そのため、実際に工場や消費者に供給される電力量は5050億キロワットアワーにとどまっている。現在のペースで経済発展が続けば、国民一人当たりの電力需要は2020年までに、現在の3倍に膨れ上がることは確実とみられる。

 ちなみに、現在インドでは、石炭による火力発電が68%を占めている。ガスによる電力供給が8%で、水力発電が占める割合が15%である。原子力発電の占める割合は2.5%に過ぎない。これはひとえに、ウラニウムの供給が制限されていることに由来している。

 そのため、インドは核不拡散条約に署名していないにもかかわらず、外交戦略を通じて、原子力先進国から先端技術を入手したり、アフリカの資源国との連携を強化し、不足していたウラニウムの安定供給を確保しようとしている。こうした努力の結果、2010年の3月には2020億キロワットアワーの原子力発電が見込まれている。

着々と周辺国と連携を強めるインド政府

 地球環境保全を求める世界的な動きを背景に、インドもクリーンエネルギーに対する投資を加速させ始めた。

現在の原子力発電の比率を徐々に高め、2050年には総電力量の25%を原子力発電でまかなうという。世界の原発メーカーにとっては、極めて有望な市場と受け止められている。言い換えれば、2002年と比較すれば、2050年には100倍もの原子力発電供給量が期待されるというわけだ。

 こうした長期的、かつ野心的な原子力エネルギー開発戦略のもと、地元インドの原発関連メーカーでは、先進各国と事業提携を深めつつある。2007年からの5年間だけでも、インドは電力供給のためのインフラ整備に1500億ドルの投資を行う、とされている。すでに述べたように、インドの最大の弱点は発電量の30%~40%が送電の途中で失われる「送電ロス問題」に他ならない。

 実際、こうしたインフラ整備の欠陥から年間60億ドル以上の損失が生じている。この送電ロスを防ぐことができれば、電力供給は急速に安定することになるだろう。その種のインフラ整備や補強のために、インド政府やインドの原発関連メーカーは各国との技術協力や、資源確保に関する協力関係を強化し始めている。

 たとえば、2010年1月25日、韓国のイ・ミョンバク大統領と会見した、インドのシン首相は、両国が原子力発電所の建設に向けて投資面と技術供与の両面から協力体制を組むことで合意した。シン首相は、インド国内のエネルギーインフラ建設に対し、韓国企業がこれまで以上に投資を加速できるような環境整備を進めることを約束した。韓国の製鉄所ポスコは、インドのオリッサ州に一貫製鉄所を建設する計画を進めているが、今後は原子力発電所の建設について、韓国企業の持つノウハウと技術を提供することでも合意したという。

「原発ルネッサンス」で巨大なマーケットが出現

 こうした動きに刺激を受けたかのように、ロシア、フランス、そしてアメリカの企業もインドの原子力市場に相次いで参入を試みるようになっている。インド政府はこれら3カ国の原発企業に対し、5か所の新たな軽水炉の建設を認める決定を下した。フランスのアレバはマハラストラ州に、ロシアの国営企業ロサトムはタミール州と西ベンガル州に、そしてアメリカの企業GEやウェスティングハウスはグジャラート州とアンドラ・プラデッシュ州に新たな原子炉の建設を進めることになった。

 インド政府はこれまで15の新たな原子力発電所の建設に認可を与えている。GE日立、東芝ウェスティングハウスなど、日本企業にとってもインド市場は大きなマーケットとして急浮上しているといえよう。1000億ドルを超える巨大な原子力マーケットがインドに誕生しつつあるわけで、各国とも官民一体となったインド市場開拓戦略に取り組んでいる。

 中でもいわゆる印僑と呼ばれるインド人ビジネスマンが多数活躍しているアメリカでは首都ワシントンにアメリカ・インド・ビジネス評議会を設立し、インドの「原発ルネッサンス」ブームに参加できる仕組みを確保しようと、必死の取り組みを進めている。とはいえ、GEもウェスティングハウスも日本企業の傘下に入っているわけで、いわば日米連合によるインド市場への参入が期待できる、といっても過言ではない。

 アメリカ政府の見積もりでは、「2025年までに、世界各国でクリーンエネルギー技術に対する投資額は17兆ドルを超える」と見積もられている。この巨大なマーケットにおいて、インドとアメリカは重要なビジネスパートナーを目指しているに違いない。思えば、アメリカのオバマ大統領が就任以来ホワイトハウスで公式晩餐会を開いたのは、インドのシン首相が訪米した時だけであった。それだけ、アメリカにとって、インドの存在は大きくなりつつあると言えるわけだ。

積極的に投資を展開するインドのヘッジファンド業界

 こうした追い風を受け、インドを代表する原発メーカーであるラーセン&トーブロの株価はこのところ急上昇中である。

 原子力発電という新たな産業が世界の注目を集める中、内外400を超える企業がインド市場でクリーン・エネルギー・ビジネスに活路を見出そうとしている。特に、リーマンショック以降、株価の急落で大きな痛手を被ったインドのヘッジファンド業界は熱心だ。「確実に高い配当が期待できる」と原子力ビジネスへの投資を積極的に進めている。インドが国家プロジェクトとして原子力発電に邁進しているからだ。

 インド政府が最大の株主となっているインド原子力公社(NPCIL)は、ラーソン&トーブロとジョイント・ベンチャーを組み、新たな原子力発電所の建設に向け、他を圧倒する存在感を示している。同公社にはインド石油公社も出資をし、提携関係を深めつつある。それを追うのが、同じく国営のバラット・ヘビー・エレクトロニクスである。NPCILはムンバイに拠点を構えており、すでに17基の原子炉を保有し、新たに5か所の建設を進めている。

新たな原子力超大国の座を目指して・・・

 また、GVKグループは12億ドルの資産を元に、GEやウェスティングハウスから原子炉、並びに関連部品の購入を進め、新たな原発関連企業として、市場参入を目指している。他にも、耐久消費財メーカーであるビデオコン、そしてインド最大の自動車メーカー、タタの関連企業、タタ電力なども原子力発電ビジネスに新規参入を試みているようだ。まさに「原子力ビジネスの戦国時代」の到来といえよう。

 既存のインドの原子力発電所は発電能力の50%ほどの稼働率しか上げていない。ひとえに、ウラニウムの供給が安定化していないためである。1974年5月、インドが核実験に成功して以来、先に述べたように、核不拡散条約を締結していないがために、海外からの原料輸入には厳しい制限が課せられてきたのである。

 しかし近年、インド政府はカナダのウラニウム鉱山に対する12億ドルの投資を始め、アフリカのナミビア、ニジェール、ガボンといったウラニウム産出国に対する積極的な投資活動を通じて、原料不足というアキレス腱を克服しようと新たな取り組みを始めている。こうした戦略的な動きに加え、自国の急速な経済成長をテコに、アメリカやアジアといった国々との原子力協力のパイプを太めつつあるのが現在のインドである。

 間違いなく、冒頭述べたような国家目標の実現に向け、インドは新たな原子力超大国の座を射止めようとして、今後はより一層大きな存在感を示すことになるだろう。鳩山総理が就任後、いち早くインドに足を運んだのも当然といえよう。しかし、アメリカや韓国のトップセールス外交と違い、現地では「15分総理」と揶揄されてしまい、確たる成果はなかったようだ。インドの経済発展に欠かせない原発技術を持つ日本への期待は高まる一方である。素早いフォローが望まれる。

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