昨年11月のドバイショック以降、ドバイに投資をしていた中国人富裕層の関心が、東南アジアのある国に向けられている。それがマレーシアだ。同国は経済の安定成長が見込める国として、にわかに注目されているのだ。
一部の海外メディアによると、今年は中国からマレーシアへ、最大20億米ドルの投資が期待でき、5月には150人~200人の中国人投資家がマレーシアを訪問する予定だ。彼らはとくに発電所、橋、空港、高速道路、鉄道といったインフラ整備事業への投資に強い関心を示しており、農業、石炭火力発電所、製造、サービス業への投資にも意欲的だという。なぜ中国人富裕層は今、マレーシアに注目しているのだろうか。

外務省のデータによると、マレーシアの経済成長率は2002年以降、実質GDPの成長率は約5~6%で推移している。リーマンショック以降の世界経済の急落にともない、2009年の経済成長率は大幅に下落。しかし内需の回復と中国経済にけん引されて第4半期の実質GDP成長率が前年同期比4.5%となり、3期連続のマイナスからプラスに転じた。景気回復へ徐々に動き出している。
人口については、治安が悪いというイメージも払拭され、インフラ整備が進んできていることから、外国人移住者の数も増加傾向。リタイアした日本人夫婦がマレーシアに移り住む例も数多い。年々数万人単位ではあるが人口は増加している。現在2800万人程度の人口は、2014年には3000万人、2025年には3500万人程度まで増加すると予測されている。
人口が増加傾向となるとおのずと不動産の数も増加するわけで、年に4~6%と不動産価格も右肩上がりとなっている。しかし首都クアラルンプールに関して言えば、タイのバンコクやベトナムのホーチミン、フィリピンのマニラほど住宅価格が高くないのが魅力。また昨年6月からはさらなる外貨の呼び込みのために、外国関係者によるマレーシア不動産取引の際に必要だった外国投資委員会の認可とブミプトラ資本条件が撤廃され、原則的に自由化となった。中国人投資家の現在の目の付けどころはインフラ整備のようだが、その次に不動産投資に彼らの資金が流れ込む可能性は十分ある。
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