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人民元切り上げ圧力高まる中、起こりうる日本への影響とは

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2010/03/20 10:30

 中国人民元のレート切り上げを求めて人民元切り上げ圧力が高まっている。人民元がその実質的な価値より安すぎて不公平だと米国を中心とした欧米諸国は主張している。

 人民元は為替介入型の実質的なドルペッグ制が採られている。ドルペッグとは、政府や中央銀行が、意図的に米国債を買うことなどで為替介入を行って人民元安に導くよう為替レートを調整し、米ドルと固定レートになるよう仕向ける方法。

 こうした中国の人民元政策を、米国や欧州連合(EU)などは以前から批判していた。米議会では人民元が過小評価されているとの見方が出ており、4月15日に公表予定の財務省為替報告で米政府が中国を「為替操作国」に認定すれば、米国の台湾への武器売却やオバマ大統領とチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の会談などで既に関係がぎくしゃくしている米中関係がさらに悪化する恐れもある。12日、シューマー米上院議員は中国の為替政策をめぐり、人民元の為替操作を止めさせるための法案を推し進める考えを明らかにした。

 14日、第11期全国人民代表大会(全人代)第3回会議が閉幕した後に行われた取材で中国国務院の温家宝首相は、「人民元が切り上がることは中国の利益にもなるのではないか」という英国紙フィナンシャル・タイムズの記者からの質問に対して、「人民元が過小評価されているとは思っていない」と述べた。

「国家が互いに非難したり、強制的に為替レートの引き上げを求めたりすることに反対する。それは人民元の為替レート改革に有益ではない、保護主義的」と不快感を示し、独自の為替改革を貫くことを強調した。

 この温首相の発言は、世界中に大きな波紋を呼んだ。日本でも、野田佳彦財務副大臣が15日の定例会見で、「基本的には人民元の柔軟化が世界経済、中国経済にとってもプラスと思う」と述べ、「ドルペッグという形がどうか、と思っている方が中国の周辺には多いのでは」と語った。

 また、15日、米下院歳入委員会は、中国の為替政策が米経済や世界経済に及ぼす影響を調査するため、24日に公聴会を開くことを明らかにした。さらに、同日、米国の超党派議員はガイトナー財務長官とロック商務長官に、中国の為替操作問題への対策を講じるように書簡で求めた。民主党のマイケル・ミショー下院議員は「オバマ政権がこの問題への対処を失敗すれば米国の景気回復は後退する」と述べた。15日のユーロの対ドルレートの下落など相場が不安定になったのは、温首相の発言の影響も大きいと見るアナリストもいる。

 温首相の発言を見ても、人民元切り上げが今すぐに行われる可能性は低いように思われるが、切り上げ圧力も続くだろう。もし切り上げられた場合の日本への影響が気になるが、「人民元高に追随して対ドル日本円レートも高くなる、いわゆる「つれ高」になるだろうが直接的な影響は比較的軽い」という見方が主流を占めている。

 ただ、それは短期的な観測で、長期的に見ると日本の財政破綻の引き金になりかねないと警鐘を鳴らす評論家もいる。と言うのも、中国政府は、昨年7月に「越境貿易人民元決済試行管理方法」を交付、9月には香港で人民元建ての国債を発行するなど、人民元建ての貿易決済の推進や外資系銀行へ人民元の国際貿易決済業務を解禁するなど、人民元を国際通貨にするため積極的な措置を打ち出している。

 もし、人民元が国際通貨となり、切り上げられた時には、日本の機関投資家も相当な額を中国に投資するだろう。それによってリスクプレミアム(リスクに対して求める収益対価)が高まり、日本の長期金利が急上昇する可能性も高いと見られているのだ。

 3日の参議院予算委員会で、日銀の白川方明総裁は、「日本の低い長期金利は、経済、物価に対する市場の慎重な見方を反映している」と指摘した。そして、「現在のところ、国債保有に伴うリスクプレミアムは高まっていない」との見方を示した。しかし、来年も再来年も赤字国債が大量発行された場合、人民元の動向次第では、一気に長期金利が上昇し、財政運営に支障を来しかねない事態に陥る可能性は否定できない。

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