為替相場を動かすのは「経常収支」に他ならない
マーケットを動かしているのと聞かれたら「ヘッジファンド」とか「スイス勢」、「中東のお金持ち」とか答えると格好が良くいかにも為替相場に通じている感がして注目されそうだが実際はそうではない。
為替相場を動かしているのは長い目で見ると経常収支に他ならない。日本でいえば明治開国以来戦前の間はこれといった輸出製品は生糸の他になく工業製品は輸入していて経常赤字国であった。為替相場は1ドル=1円に始まり太平洋戦争直前には1ドル4円まで円安が進んだ。
日本の戦後は敗戦から立ち直り軽工業製品の輸出に始まり自動車家電を主とする世界最大の輸出国となり経常黒字となった。ドル相場は1973年に変動相場制へ移行し260円から79円まで円高が進んだ。経常黒字が円高を生みだした。
米国は戦後は恒常的に経常赤字国となりドル相場は下落の一途を辿った。また経常赤字が続く英国ポンドは安い。日本と同様に戦後経常黒字国となったドイツはドイツマルクからユーロの現代まで通貨は強い。この相場形成に最初に上げた「ヘッジファンド」「スイス勢」「中東」などの投機筋の入り込む余地はない。相場を動かしているのは経常収支である。ただこれは長い目で見ての話しでありこれに従って10年、20年あるいはそれ以上為替相場のポジションを持ち続けられる人は少ないだろう。

短期的な為替相場を占うには
短期的な動きとなれば経常収支というモノの流れの他、資本収支というカネの流れを見ることも重要だ。さらにはその時々の需給の流れ、現在で言えば景気のいい高金利国で資源国にお金が集まりやすいことや、日本の年度末には海外拠点から利益を送金してくるために円高になりやすいリパトリエーションの動き、国際間にまたがる大型買収案件に伴うお金の動き、ギリシャなど債務国のことが焦点になればその国からお金が逃げやすくなる動き、その時々の経済事象によって生まれるお金の動きによって為替相場が動いてくる。
短期的な為替相場の売買をする人にとっては経常収支の増減と同様にこれらのスポット的な動きも重要である。そういう時に投機筋がその流れをさらに加速させる役目を担うこともある。
投機筋の動きはあくまでも短期的なものであり、彼らは収益を上げなくてはならないし、大きな損失を負うこともできないので回転売買となり需給的には中立となり為替相場の長期的な形成には影響を及ぼさない。やはり需給を半永久的に歪める経常取引の動きが為替相場を形成する。
プロを恐れるな
さて短期的な流れを追って効率的な売買を行うにはどうすればいいか。(次ページへ続く)