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「日本国債への評価」が国内外で雲泥の差 外国人が無視する日本の事情

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2010/03/27 16:00

世界中の国で財政赤字の拡大が議論され、「ソブリン」リスクが議論されています。財政赤字の日本は、外国人からどう見えるのでしょうか。

外国からの評価が低い日本国債

 日本に対する格付を見てみると、なぜか外国からの日本に対する評価が低いことに気付きます。日本国内に本社を置く格付会社のR社やJ社では、日本の格付が最も高い「AAA」なのに対し、米国が本社の会社では「AAA」「AA+」に次いでランクが低い「AA」となっています。

 ランクの差は高々2つですが、意味合いはまったく違います。「AAA」とは、1年以内に破綻する確率は限りなくゼロなのに対し。「AA」では1年以内に破綻する可能性があるという判断です。そして実際に「AA」の企業が1年以内に破綻した実績が過去にはあります。この差は一体どこから来るのでしょうか?

外国からの評価が低い理由

 外国の格付機関が「AAA」から「AA」に2段階差をつけるのには、大きくわけて2つ理由があると考えています。

理由その1 「日本の将来性」

 1つ目の理由は、日本の将来性に関する複合要因です。日本の財政の悪化はもちろんですが、財政が悪化している理由、高齢化、少子化、潜在成長率の低下、政治のリーダーシップ不全などなど、すべて複雑に絡み合った理由です。

 バブル崩壊以降、「失われた10年」といわれたのが、最近ではいつの間にか「失われた20年」という言葉を聞くようになりました。将来に希望が見えません。国債の残高/GDP比率などさまざまな数字も確かに先進国の中で突出した悪さです。格付会社としては、「AAA」はつけにくいのが本音なのでしょう。

理由その2 「日本を知らない」

 2つ目の理由は、自国バイアスです。一言でいうと外国人の日本に対する知識不足です。
外国の格付会社は、日本のことを知っているようで知らない可能性があります。次のような事例があります。

 実は、国債のみならず一般の事業会社の格付も、日本の格付会社と米国の格付会社で常に異なります。日本の格付会社は、会社と金融機関との密接な関係などを考慮して格付を付与するのに対し、米国の格付会社は、基本的に純粋に財務諸表などを比較して格付を行います。理由は極めて単純で、米国ではメインバンクという存在が希薄なため、米国の格付アナリストが「金融機関との関係の重要さ」を判断できないからです。

 米国の格付会社が日本関連の格付を決定する際、米国本社と日本支社で電話会議を行うことが多いと聞いています。その電話会議では、日本にいる1人の格付アナリストが、電話の向こうにいる複数の米国格付アナリストを説得するという形式になります。日本側のアナリストの立場から見ると、米国流、しかも話の通じにくい電話会議の場で「金融機関との厚い信頼関係」を取り上げても理解してもらえないことは想像に難くありませんし、たとえ理解してもらえたとしても、他国に同様な例が少ないため評価が出来ないというのが実情でしょう。

 一方、日本の格付会社は日本の事情を良く理解しています。なぜ誰が日本国債を買うか、企業同士の付き合いがどうなっているか良く知っています。2003年以降「日本政府はメガバンクを潰さない」という見方が広がった時、米国格付機関はこの見方に懐疑的だった一方、日本の格付会社はこの見方を格付に取り入れました。どちらが正しかったか判断は難しいですが、結果として日本のメガバンクは今でも存続しています。

 米国の格付会社が日本を正しく評価できないように、日本人である我々が米国を正しく評価できているかどうかという点について、我々も振り返ってみる必要があるのかもしれません。

結局日本国債は危ないのか

 さて前置きが長くなりましたが、結局日本国債は危ないのかどうか、の本題に入りましょう。

 ソブリンリスクでいろいろ騒がれている日本国債ですが、私は結局のところ100%安全であり、100円の日本国債は100円で返ってくると考えています。

 日本は外国からお金を借りていません。逆に外国にお金を貸しており、米ドルも100兆円単位で持っています。外国からお金を借りていないということは、国債はほぼ全部円建てです。円建てである以上、自分が通貨の発行権を持っているので確実に償還が可能です。

何かがあれば通貨が調整

「通貨取引を制限していない先進国の国債はデフォルトしない」、これは知り合いのU証券のAエコノミストの意見なのですが、私もまったく同意見です。最近の韓国、イギリス、米国も何か問題発生した場合、まず通貨が調整しました。過去破綻した国の例を見てみると、通貨をペッグしたり取引制限をしたり、通貨取引に何らかの制限をかけていたことが状況を悪化させました。

 前回40回でも書きましたが、本当に日本が危ない場合、大幅な円安になります。輸入物価が上がるため国内はインフレになります。金利が上がりますが、インフレで税収が増えるため財政赤字のGDP比は減る可能性が高いです。円が安くなるため輸出産業の競争力が増加します。

 いいことばかりではありません。円が安くなってしまうので、世界で見れば日本人の資産は減少します。ドル建てで測定されるGDPの世界順位も額実に低下します。国内ではインフレのため、年金生活者や低所得者の生活が圧迫されます。確実に国民の生活は悪化します。

 ただどんな状況になっても円建ての日本国債は100%償還されます。実質価値はインフレや円安などで世界的に見れば大きく毀損することになると思いますが、100円で発行された国債は100円で返ってきます。繰り返しになりますが、円建てであるため、返ってこない理由がないからです。

日本国債の安全性への正しい理解を求む

 日本国債市場に何らかの異変が生じた場合には、確実に円は暴落し国民生活は疲弊します。「国債の利払い費」の増加がそのトリガーになる可能性が高いと思っています。

 ただ、それらの混乱と日本国債の償還可能性はまったく別の議論です。米ドル建てで取引されている日本のソブリンCDSは、通貨の変動を折り込んでいくので大きく動く可能性が高いです。ただこれも円建て日本国債の償還可能性とどれだけ関係があるの全く分かりません。

 市場には間違った情報が氾濫し、格付会社でさえ大きな誤解を修正できずにいる可能性があります。市場ではそれら正誤不明の情報を元に取引が行なわれ、ニュースを騒がしています。残念ながらそれが悲しい現実です。正しい情報を正しく理解する努力が常に求められています。

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