始まった「ユーロ離れ」
ギリシャ危機を材料とする短期投機筋の「ユーロ売り」でユーロが大きく下落してきました。ここにきて短期投機筋だけではなく、長期投資家もユーロを売り始めたようです。
5月に入りECBとIMFによるギリシャへの緊急支援策がまとまりました。ユーロはいったん値を戻したものの、その後じり安が続いています。短期投機筋が相変わらずユーロを売り続けているのに加えて、市場ではある投資家の売買行動の変化が注目を集めました。
「ユーロ買い」から「ユーロ売り」へ
その投資家とは、いわゆる国の外貨準備を扱う機関で、国によっては中央銀行であったり、別の国ではソブリン・ウェルス・ファンドと呼ばれたりしている投資家です。彼らは「長期投資家」であり、リアル・マネー投資家の代表例でもあります。
昨年末からのユーロの大幅な下落の中で、彼らはユーロを買い続けていた数少ない投資家でした。彼らは自分達で投資目標となる基本ポートフォリオを設定し、そのポートフォリオを目標に投資を行います。そのため、価格の下落などの市場変動により、投資資産の割合にずれが生じた場合、割合が減少した資産を購入する必要が生じます。彼らの投資行動は基本的に逆張りとなります。

その投資家の「行動パターンが変わった」という話が伝わってきました。ユーロが下落しても買い増しを行わなくなったそうです。買い増しを行わなくなったとすれば、その理由の1つとして考えられるのは、「基本ポートフォリオの見直し、ユーロ比率の低下」となります。
早期の解決を希望するが前途多難
1999年ユーロ導入当時、1ユーロ=1ドル程度であったユーロの価値ですが、ユーロ参加国の増加などによる信認の向上、長期投資家のユーロ買いなどで約1ユーロ=1.5ドルまで上昇しました。
今回、ギリシャ問題でユーロの信認が失墜しています。もし本当に長期投資家がユーロを売り始めているとすると、ユーロ相場は大きく逆回転し、1999年当時の水準まで戻ってしまう可能性があります。
不安定なヨーロッパの財政問題は、回復途上の世界経済にとって脅威となります。それに加えてスペインで金融機関の不良債権問題や韓国北朝鮮の軍事対立の話まで出てきて、不安定だった市場がますます不安定になっています。しばらくリスクの高い状況が続く可能性が高いと考えます。市場はネガティブニュースに対して非常に敏感になっています。無理な投資は行わず、事態が好転するのを待ちたいと思います。
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