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敵も味方も多い「王様アップル」の強気なブランド戦略

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2010/05/30 14:30

iPadの売れ行きも順調なアップル。同社は熱狂的なファンを多く持つことでも知られているが、その強気なブランド戦略が批判されることもしばしばだ。

 5月28日、米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の国内発売がスタートした。iPadはノートパソコンとスマートフォンの中間に位置する「タブレットPC」と呼ばれる端末で、音楽や動画の再生、電子書籍の閲覧、インターネットや電子メールなどが手軽に利用できるのが売りだ。

 2010年1月に米国で商品発表された際には、同社のiPodシリーズやiPhoneのように何百万台も売るのは難しいと見られていたが、ふたを開けてみれば発売後1カ月弱の期間に米国だけで100万台を売り上げ、日本でも予約が殺到するほどの人気となった。都内のアップルストアには、すでに予約済みにもかかわらず、いち早く購入したいと2日前から並ぶユーザーも現れ、銀座店では発売日当日に約1200人が行列を作った。このiPad人気によって専門家の間ではタブレットPC市場が2010年内に1000万台規模に達するとの見通しも強い。

 実はタブレットPCはすでに他社から発売されており、iPadが最初の商品というわけではないのだが、これまで普及が進んでこなかった。それがなぜアップルのiPadの登場によってこれほど注目を受けるのか。その答えは同社の異常なまでにこだわったブランド戦略に見ることができる。

 一般的にメーカーは商品を広く流通させるために可能な限り多くの家電量販店に商品を置こうとするが、iPadでアップルがとった戦略はその逆だった。全世界で展開する新商品にもかかわらず、日本国内での販売店を絞り込み、大手家電量販店でもiPadを取り扱うのは1割弱に過ぎない。提携するソフトバンクショップでも、約2500店のうち16店舗のみにとどまる。秋葉原のある家電チェーンはiPadを取り扱うことができないばかりか、iPodなどもアップル側の意向によって6月中に販売できなくなるという。

 アップルが販売店を限定するのは、ブランドイメージを高める戦略に他ならない。実際に取扱店を限定したことで希少価値が増し、iPadの予約殺到につながっている。ブランド力を維持し、商品を魅力的に見せるため、量販店の店舗ごとに独自の基準によって評価を行い、自社製品を扱う店を選別しているとみられる。

 同社はアップル製品の販売・サービスに特化した販売代理店を募集しているが、その条件は店舗の全スタッフに同社認定のオンライントレーニングを受講させることから、「幅3メートル以上の入り口/玄関があること」「75平方メートル以上の展示スペースが確保されている」などの項目までおよび、非常にきびしい。ここまでではないが家電量販店に対しても、かなり高い要求水準をであることがうかがえる。

 ただそれでもこうしたアップル側の一方的な施策に対して、声高に意義を唱える小売店が出てこないのは、それだけアップルの商品に魅力があり、同社と軋轢を生むような行動はなるだけとりたくないからだ。

 この消費不況の中で、何万円もする高価商品が飛ぶように売れるブランド力を持つ企業がアップル以外にはたして何社あるか。家電量販店にとってもヒット商品を連発する同社の存在は貴重だ。

 だが一方で、行き過ぎたマーケティング戦略は同社にとって思わぬ落とし穴にはまる危険性もはらんでいる。世界標準のコンテンツ作成ソフトであるFlashを独善的に非対応としたり、半ば強引とも言える方法で、ソフト開発者を縛りユーザーを囲い込んでいく姿勢に反発するライバル企業や消費者は少なくない。

 同社を率いるカリスマ経営者スティーブ・ジョブズがいる限り、アップルは成長し続けるという声もあるが、しばしば噂される同氏の健康状態や後継者が育っていないという点も懸念材料だ。

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