減速を始めた中国経済
リーマンショックを大規模な経済対策で克服し、今や世界経済のけん引役となっている中国ですが、当局の引き締めの影響もあり、とうとう減速の兆候が現れ始めました。
6月に入り、減速傾向はよりはっきりしてきました。まず、各種指標により確認していきましょう。

とあるニュースは住宅価格について、前年比2ケタの上昇と報じていましたが、前年比で指標を測定すると、転換点で間違える可能性が高くなります。
各株式市場を始め、「産業の米」と言われる自動車販売、住宅価格、そして景気回復の原動力になった新規融資など、月次の指標で見ると確実に中国景気は調整局面に入ったと判断できると思います。
ニュースフローに見る中国経済の減速
次にニュースフローを見てみましょう。
【ニュースタイトル】
・6月の電力需要の伸びが急速に鈍化
・販売用自動車の在庫が増加
・上海住宅の落ち込み止らず
・IPO(新規株式公開)が過去最高か?
6月に入り、景気減速を示すヘッドラインが少しずつ流れるようになりました。景気の転換点ではこれらのニュースを的確に捉え、実際に何が起こっているかを把握することが大切となります。
まず、6月の電力需要が低下したというニュースが流れました。日本同様、中国でも電力消費量は景気を測る上で大切な情報です。
残念ながら電力需要が鈍化した理由はまだ正確には分かりません。自動車販売の低下と在庫の増加から生産が低下した、5月に米国国際貿易委員会により中国製アルミ製品のダンピングが仮認定された、住宅の建設が減速したなど推測はできますがはっきりは分かりません。ただ購買者担当指数が下がっていることから、生産が少し減速しているのは間違いないでしょう。
次に住宅販売と価格の下落です。指標では前月比-0.1%とほぼ横ばいになっていますが、ニュースの内容やマンション業者のサイトを実際に見てみると、現実は厳しい状態であることが分かります。
住宅販売戸数が低下し、価格が横ばいというのは住宅バブル末期に米国などで見られた現象で、買い手は値段が下がると思い値段の低下待ち、売り手は損を出せないので売値を下げない、または売値は下げずに家具やテレビを付けるなどオプションをつけることにより実質的に値引き販売をいっている状態です。
北京や上海の業者のサイトでは20%引きなどの物件が多数見られることから、住宅バブル末期の状態であるのはほぼ確実でしょう。
一方で、今後IPO(新規株式公開)が相次ぐ予定であるというニュースもありました。このニュースをどう理解すればいいのでしょうか。(次ページへ続く)