外国人シェア「アップ」、個人シェア「ダウン」
「閑散」の二文字が、経済紙やネットのニュース記事では毎日のように目に入る。マーケットが閑散というのは、売買代金や出来高が少ないことをいい、こういう時期には値幅も出ないことが多い。
「値幅が出ないから短期売買のうまみがなく、結果として出来高が減った」という意見もあるが、これは「卵が先か、鶏が先か」の次元の話。値幅が出て出来高が増えるのが理想である。
数字上では、8月の東証1部の1日平均売買代金は1兆900億円。これは04年8月(9664億円)以来6年ぶりの低水準だという。ちなみに8月は日経平均で5%以上も値下がりしており、「閑散に売りなし」という相場の格言もハズレた1ヶ月でもあった(単に「閑散に買いなし」なだけ?)。
閑散なのは日本だけでなく、売買高でみれば米国も上海や香港も低水準である。ただ、売買高について、ある市場参加者は「全世界で今は出来高が落ちている感じ」と言いながらも「6年ぶりとはいっても、当時より体感的にはさらに閑散な気がする」と言う。
このように感じる主因は、売買全体のうち、人力ではない売買(アルゴリズム取引など)が現在は相当量含まれているためである。
東京証券取引所の公表する投資部門別売買動向をみると、増加傾向にあった海外投資家のシェアが、ここにきて急拡大している。海外投資家のシェアが5割を超えた一方で、シェアを低下させたのは個人投資家だ。こちらは2割未満になった。

東証の次世代株式売買システム「アローヘッド」稼動の影響で、機械が自動的に注文を出すアルゴリズム取引が急増。結果、ティック(値刻み)回数、つまり約定回数は従来の2倍程度に膨らんでいるのだという。「注文件数自体も増えている」とのことで、注文そのものが細かく刻まれているだけで、機械以外の注文は確実に激減していると考えられる(例えば、同じ200株の注文でも、200株で1件ではなく10株で20件の注文など)。
こうなると、人間では機械のスピードに追いつかないことから、個人投資家にとって今の相場はやりづらく、魅力度は極端に低下しているといえるだろう。つまり、海外投資家のシェア上昇は、海外からのオーダーが増えたわけではなく、個人のオーダーが減った(個人のシェアが低下)ことで相対的に海外投資家のシェアが上昇したというのが実態なのだ。
新ジャスダックが10月に登場!
個人投資家が市場との距離を置き始めると、個人がメインを張っている新興市場は「激・閑散」仕様になってくる。新興市場に今、何が起きているのだろうか。(次ページへ続く)