株価材料と株式市場の値動きの関係
前回は、大衆メディアや個人投資家の多くが、単純化された情報を好み、それに流されやすいというお話をしました。
今回は、今月の日本株式市場で一番のイベント、インパクトとなった為替介入を例として、株価材料(報道)を受けての投資家の心理・反応、株価の動き等を考えてみましょう。
2010年9月15日、15年ぶりのドル円82円台突入で、日銀は6年半ぶりの為替介入を実施しました。その当日の報道と、値動きを振り返ってみます。
9月15日午前10時半頃に「日銀が円売り介入を行ったようだ」との観測から、日経平均は急激に上昇。午後には「2000-3000億円規模らしい」との観測も聞かれ値を保ち、日経平均はほぼ高値圏の前日比217円高で取引を終了しました(なお介入規模は後に、1日当たり史上最大の1.8兆-2兆円との観測がありました)。

これにより、日経平均の日中値幅は379.45円と今年最大を記録し、東証1部売買代金は約1兆6736億円と約3カ月ぶりの高水準となりました。為替介入という大きな株価材料に、大きな市場の反応と、大きな値動きを示した格好です。
「知ったら終い(しったらしまい)」という有名な相場格言があります。株価が動きそうな材料があっても、実際にその材料が正式に報道されたら、その相場は終わる。株価は思惑・観測で動き、事実報道で出尽くしとなるという格言です。
9月15日の為替介入に関しては、野田財務大臣が口先介入を繰り返していたために、すでに思惑・観測はあり、為替介入自体にサプライズはなく、「知ったら終い」となってもおかしくはなかったのですが、政府・日銀の迅速な対応への期待感がまったくと言っていいほどなかったことで、株価がこれを織り込んでおらず、今回、株価は好材料に素直に反応し、急騰となりました。
株価材料と株価の反応の関係は、単に材料の好悪だけではなく、事前の市場の(相場参加者の)期待・警戒・楽観・悲観などのセンチメント、材料(報道)の織り込み具合、株価位置などにより決定される部分も小さくないことが分かります。
株価急騰時の投資初心者の方の疑問
株価急騰時によく、「今日はなぜこんなに上がったのでしょうか?」とのご質問を受けるのですが、そんな時、私は冗談半分に「上がったから上がったのでしょう」とお答えしています。(次ページへ続く)