衝撃を与えたマイクロソフトの投資行動
9月下旬、米国の大手ソフトウェア会社マイクロソフトが計47億5000万ドル(約4000億円)の社債を発行しました。
マイクロソフトは世界でも指折りの超優良会社であり、米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)とムーディーズからそれぞれAAAの格付けを取得しています。
そのマイクロソフトの社債の発行の希少性から、社債は投資家の人気を集め、そのうちの3年債は表面利回り0.875%というまるで日本の債券のような利回りで発行されました。
社債の低い発行利回りも驚きでしたが、もっと衝撃を与えたのは社債発行で得た現金の使い道でした。マイクロソフトは47億5000万ドルを、株式の買取(自社株買い)と配当の増額へ使用すると発表したのです。
低利で調達した資金で財務活動に励む企業たち
企業は株式を発行して資本を調達します。企業は株主のものなので、企業は株主の要求リターンを実現することが存在目的となります。そのために金融機関から株主の要求リターンより低い利回りで融資を受けレバレッジを上げたり、事業の拡大を行ったりします。
では、企業が社債を発行し、その資金を事業拡大に使用せず株の買取に使用するとはどういうことでしょうか? 2つ考え方があると考えています。
まず1つ目は、経営陣が「株価が不当に割安に評価されている」と考えている場合です。株式市場の自社に対する評価が不当に低いと感じている場合、低利での債券発行と同時に自社株買いを行いレバレッジを拡大し、加えて配当増額をアナウンスします。
これにより、株式への期待を高めるとともに、株式が割安であることを投資家にアピールすることができます。この投資行動は、実は「安いものを買う」という基本的な投資行動です。買う対象は自社株でも他の会社の株でも良く、安いものを買うことで市場の自社株式への評価を高めることができます。
次に2つ目ですが、企業が「市場に収益機会が少なく株主の要求利回りを達成できない」と考えている場合です。この場合、安い金利で市場から資金を調達し、高い要求利回りの株主に資金を返還することで、その企業全体への要求利回りを低下させることができます。
企業にとっては高い要求利回りの株主の株を買い取るわけなので高い買い物をするわけなのですが、その効果として低い市場の収益率に企業の実態を合わせることができます。

この2つ、内容はややこしく見えますが共通したポイントがあります。それは、「純粋な財務活動であること」と「調達した資金は自前での事業拡大に使わない」ことです。低金利の環境下では、企業は雇用拡大や工場の建設といった自前での事業拡大より、財務活動による経営効率の向上を選択しています。
低金利は雇用を産むのか?
では低金利は雇用にどのような影響を与えるのでしょうか?(次ページへ続く)