大数の法則とは?
前回は、システムトレードの条件として、
(1) どのようなルールで取引するのかが厳密に定められていること
(2) 取引回数を多く重ねることで「真の勝率」に近づくことができる「大数の法則」をよりどころに、確実な勝ちをめざすこと
の2つをとりあげました。この(2)を理解することは重要かつ難しいところもあるので今回はもうすこし詳しく書いてみます。また、「取引回数を多く重ねる」ということにともなうコストがどうなるのかも考察しておく必要があります。
システムトレードの有効性についての理論的な柱は「大数の法則」です。
これ自体は確率に関する数学の定理であり、正しいことは疑いありません。大数の法則とは、「ある確率 p で起きる事象を N 回試行してそのうち C 回発生するとき、Nを極限まで増やしていくこと C/N はpに収束する」というものです。極限、収束といった言葉も数学では厳密な定義がなされていますが、ここでは簡単に、「たくさん実行すれば真の確率に近づく」と理解すれば十分でしょう。
たとえば、普通の6面体サイコロを振って1が出る確率は1/6(p=1/6)ですが、6回振ったとき(N=6) 必ずそのうち1回出る(C=1)、というわけではありません。ちゃんと計算すると次のようになります。

このように、N=6のときはC/Nはかなり大きな分布を見せます。たとえば6回中3回以上1になる確率は6%強もあります。
しかしN=600にすれば、そのうち300回以上1が出る確率は完全に無視できるほど小さくなるでしょう。さらにN=6000, 60000,…と増やしていけば、C/Nはどんどん1/6に近づいていく、というわけです。もしあまり外れた値になるようだったら、もともとの確率1/6というのがウソではないかと疑うのが合理的というものです。
ギャンブルでイカサマした時の確率は?
これは逆に確率を推定することにも使います。たとえば、ギャンブルでイカサマをするために微妙に1が出やすいサイコロを作ったとしましょう。
例えば、1の反対側の6の面の側がわずかに重くなるように細工をするといった手段があります。では、このサイコロが1の目を出す確率はいくらでしょうか?(次ページへ続く)