明確な理論的根拠はないが、よく当たるのがアノマリー
なぜだか分からないが株価が上昇・下落しそうと感じることは誰しも経験のあることではないでしょうか。このような一個人の感覚は、単なる「ヤマ勘」と笑い飛ばされます。
しかし、なぜ株価が上昇・下落しそうと感じたのか、その原因を考えると、笑い飛ばすのもはばかられます。なぜだか分からないが株価が上昇・下落しそうと感じた根拠は、既視感(デジャブ)であることが少なくないからです。
デジャブと言えば、ヤマ勘どころかオカルトだと笑われそうですが、過去に体験したような相場が現在再現されつつあると感じることは、経験則による場合がほとんどです。そのような相場参加者、つまり経験則に従い売買する参加者が多くなれば、当時と同じような相場が再現される可能性が高くなるのが相場です。
このような過去の経験則に基づく将来の予測、その的中率が高いものを金融市場では「アノマリー」と呼びます。
「ヤマ勘」と「アノマリー」の違いはなんでしょうか?
ヤマ勘はあくまでも勘です。自身が感じただけで、論理的な説明ができないもの、他人に根拠を示すことができず、他者の納得を得られないものです。同調者が居ないため、相場に与える影響は限定的です。
一方、アノマリーとは、明確な理論的根拠はありませんが、高い確率で当たるとされる経験則です。明確な理論的根拠はなくとも、それなりの理屈はあるのです。経験則故に、経験の積み重ねによるデータ、数的根拠もあります。それなりの理屈と数的根拠があれば、自身は納得でき、他人を納得させることもできます。多くの人が納得すれば、相場参加者の心理に影響し、売買、株価にも影響します。アノマリーとは、相場における共通認識、相場を動かす共通意識とも言えるでしょう。
以下、アノマリーとして有名なものをいくつか見てみましょう。
1月効果(ジャニュアリー・エフェクト)
年末から1月初旬に株価が上昇しやすいことを、1月効果と言います。年末には来年への期待を、年初には本年の希望を語るのが一般的です。年明け早々、懸念や警戒を語ると人間性が疑われそうとの思いからか、万年ネガティブの某大学教授も某アナリストも、この時期だけは沈黙を守る傾向もあります。相対的に弱気のリポートや声は減少し、売り材料が減ることで株価が上昇しやすい、然るべくして、街も相場も明るい雰囲気となり、相場は堅調になりやすいというアノマリーです。
これだけでは、心理的な、気分的な話に過ぎない、株価上昇を裏付ける根拠とはならないと考える方もいらっしゃるでしょう。では、需給的な要因も考えてみましょう。
米国の個人投資家は、12月は節税対策(損出し)の売りを出し、配当落ち後に株やオープン型投資信託を買う傾向があります。ファンドがニューマネーを積極的に株式市場に振り向けるのは年明け以降が一般的と言われています。そのために、配当落ち後(年末)から年初の株価が堅調となることが多いとされています。
米国の株価が堅調であれば、日本株式市場にもポジティブに働きます。ファンドのニューマネーが日本株に向けられるのではとの思惑から、買いが膨らむという可能性も考えられます。
このような傾向、解説を聞かされると、年末から1月初旬に株価が高いのも当然のような気がしてきませんか? いや、もっともらしいコジツケに過ぎないと言われる方もいらっしゃると思います。では、データで見てみましょう。

年間立ち会い日数が240日程度であることを考えると、年間のTOP10パファーマンスの内、4日間が年末年始に集中していることは驚きです。7割強の確率で勝てるという数字を見れば、買ってみよう、売り難いと思う市場参加者が多くなっても不思議ではありません。
米国株式市場に関する詳細なデータが手元になく申し訳ありませんが、ざっくり見ても年末・年始は高く見えます。特に小型株のパフォーマンスが良好なことは周知の事実です。
続いてさらに興味深いアノマリーを見てみましょう。(次ページへ続く)