円安で恩恵を受ける企業は、売上高と有形固定資産の国内外比率でチェック!
為替変動による影響というと、真っ先に報道されるのが自動車業界。1円の円高・円安で受ける影響は、営業利益ベースでトヨタ自動車は350億円、日産自動車は200億円、ホンダは160億円などといわれることが多いものだ。
ただし、自動車各社の輸出台数や輸出金額が多いことから注目が集まるが、これまたトヨタを例にとれば、海外における車両販売台数の7割以上は海外生産によるもの。つまり、輸出型企業からの脱出を指向した生産の現地化やリスクヘッジで、自動車各社の為替変動による影響は以前に比べれば小さくなっているといっていいだろう。
では新たに、円安で利益拡大が見込まれる隠れた企業を探すにはどうしたらいいだろう。1つのポイントは、売上高と有形固定資産の国内外比率を見てみることだ。
建物、機械、車両運搬具、工具、土地といった生産拠点などの資産価値を示す有形固定資産(一部企業は「長期性資産」)の国内割合が高いということは、国内生産が中心であるということ。そのうえで、海外売上高比率が高ければ、円安で恩恵を受ける輸出主導型企業とみていい。海外売上高比率が50%以上の一方で、海外有形固定資産の割合が50%以下を目安としよう。
さて、「海外売上高比率50%超」「海外有形固定資産比率50%以下」の企業とは――。
自動車各社でいえば、トヨタや日産、ホンダは海外売上高比率が6割から8割に達しているが、同時に有形固定資産の割合も50%超であり、この目安からすれば、必ずしも輸出主導型企業とは呼べないということになる。一方、マツダ、富士重工業、いすゞ自動車は海外売上高が6割~7割台の一方で、有形固定資産の海外比率は10%内外にとどまる、典型的な輸出主導型企業である。
電機業界で該当するのはソニーと東芝。両社は海外売上高比率が高い一方で、有形固定資産の海外比率は2割台にとどまる。
造船重機・建設機械では川崎重工業、クボタ、住友重機械工業、三井造船、それに海外有形固定資産割合が3割強ながら海外売上高比率が8割のコマツも円安享受を受ける代表的企業である。(次ページへ続く)