略称ゼロ戦、正式名称「零式艦上戦闘機(れいしきかんじょうせんとうき)」は、第二次大戦時における旧日本海軍の主力艦上戦闘機として誕生したメイド・イン・ジャパンの傑作機だ。抜群の運動性能や攻撃力などから、当時は世界最強とも称された同機だったが、終戦とともにその役目を終え、また用途が平和とは対極をなすこともあり、一部マニア以外の人々の記憶のなかからも消えていった。
ところが、昨年よりゼロ戦をモチーフにした映画が登場して人気となり、展示する施設は、見学者でどこも盛況のようだ。
アニメ映画「風立ちぬ」の主人公で、ゼロ戦の生みの親である堀越二郎氏が、勤務していた名古屋(愛知県)の三菱重工業も、そんなひとつ。同社の小牧南工場(愛知県西春日井郡)にある名古屋航空宇宙システム製作所資料室には、ミクロネシア連邦ヤップ島で発見された残骸から復元されたゼロ戦が展示されており、かなり間近で見ることができる。そのため、飛行機の随所にほどこされた性能向上を図るためのひと工夫もよくわかり、あらためてゼロ戦の凄さに驚く人も多いという。また同資料室には、同盟国ドイツの技術をベースに開発が進められていたロケットエンジン戦闘機「秋水(しゅうすい)」もあり、こちらも必見だ。入室料金は無料。ただし要予約。
また、ゼロ戦パイロットの悲話である映画「永遠の0」と関係が深いのは、大分県宇佐市の「宇佐市平和資料館(入館料無料)」だ。旧日本海軍の航空隊基地があり、敵の攻撃から飛行機を守る「えんたい壕」など、多数の戦争遺跡が点在する同市が、2013年6月に平和教育の一環として開館した同資料館には、基地に関する資料とともに、映画で使用した原寸大のゼロ戦模型やコックピットも展示されている。

一方、飛行可能なゼロ戦を日本へとする活動「零戦里帰りプロジェクト(運営は、ゼロエンタープライズ・ジャパン/東京都品川区)」も、着々と進行している。これは、パプアニューギニアで発見された残骸をもとに復元され、現在アメリカにあり実際に飛ぶこともできるゼロ戦を、日本国内に移して保管しようとするもので、早ければ3月には一時帰国の予定だ。しかし問題は費用面。一時帰国の輸送費だけでも約800万円、また帰国後の機体維持には年間約4,000万円は必要と試算されている。捻出には、イベントの開催や、いま会員を募集中の同プロジェクト賛同者の組織「ZEROサポーターズクラブ(入会金6万円、年会費3万5,000円)」の会費の一部があてられる予定だ。

ゼロ戦は、かつて戦争で使われた兵器でもある。しかし工業製品づくりにおける日本の実力の高さを、世界中が認めた優れたモノの“はしり”でもある。きちんと後世にも伝えておくべき日本の文化的な遺産のひとつといえるかもしれない。
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