気になるトヨタ社長、前社長の自社株配当金額は
メーカー系の場合、社歴が古いこともあってオーナー一族が財団などの基金用に自社株を移しているケースも目立つ。ある種の相続対策といっていいだろう。
そのために、所有する自社株で得る配当金は、前回紹介したファーストリテイリング(9983)の柳井正社長の138億円強やソフトバンク(9984)の孫正義社長の92億円には届かないようだ。財団などが所有する株は、共同所有分からは除外して計算している。
最も気になるのは、世界販売トップのトヨタ自動車(7203)の豊田章男社長だろう。同氏は自社株458万8,000株を所有。13年度の1株配当金は165円だったことから、配当金総額は7億5,700万円だった計算になる。業績伸張を受けて14年度の1株配当金がアップすれば、配当金総額がさらに増えることは間違いないところだ。
豊田章男トヨタ自動車社長
所有・トヨタ自動車 | 458万8,000株(1株配当金165円) |
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配当金総額 | 7億5,700万円 |
章男氏の父親で社長・会長を務めた章一郎氏はトヨタ株を1,114万株所有しているほか、取締役や監査役を務めている自動車部品大手のデンソー(6902)やアイシン精機(7259)の株式も保有。3社合計の配当額は19億円を超すと推定される。さらにいえば、共同所有の提出書はないが、会長職にある東和不動産(トヨタグループの不動産会社)が所有する分を含めれば、配当金総額はもっと高額になる。
豊田章一郎トヨタ自動車元社長
所有・トヨタ自動車株 | 1,114万4,000株(1株配当165円) |
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所有・デンソー株 | 69万7,200株(同105円) |
所有・アイシン精機株 | 1万2,000株(同95円) |
合計配当金 | 19億1,300万円 |
数多くの企業買収を手がけている日本電産(6594)の永守重信社長はどうか。同氏は上場を廃止した日本電産リードや日本電産コパル電子の株式も所有しており、13年度は共同保有分合計では18億8000万円の配当金を受け取っていると推定される。
永守重信日本電産社長
所有・日本電産株 | 1,817万株(1株配当金100円) |
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所有・日本電産リード株 | 96万株(同30円) |
所有・日本電産コパル電子株 | 204万8,000株(同17円) |
合計配当金 | 18億8,000万円 |
10億円超えは、タカタ、京セラ、大正製薬、ノエビアだが
その他の経営陣はどうだろうか。自動車部品のタカタ(7312)の高田重久会長兼社長と京セラ(6971)の創業者である 稲盛和夫氏が13億円台だ。
社名 | 氏名 | 推定配当額 |
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タカタ | 高田重久会長兼社長 | 13億7,200万円 |
京セラ | 稲盛和夫名誉会長 | 13億4,500万円 |
大正製薬HD | 上原昭二名誉会長 | 11億5,300万円 |
ノエビアHD | 大倉昊会長 | 10億500万円 |
ポーラ・オルビスHD | 鈴木郷史社長 | 7億円 |
HOYA | 山中衛元社長 | 6億7,600万円 |
リンナイ | 内藤進会長 | 5億700万円 |
アリアケジャパン | 岡田甲子男会長 | 5億600万円 |
リンナイ | 林謙治副会長 | 4億4,200万円 |
大塚HD | 大塚一郎副会長 | 4億1,100万円 |
フクダ電子 | 福田孝太郎会長 | 4億230万円 |
小林製薬 | 山下章浩社長 | 3億9,800万円 |
ニフコ | 小笠原敏晶会長 | 3億5,600万円 |
マブチモーター | 馬淵隆一元会長 | 3億5,000万円 |
コーセー | 小林一俊社長 | 3億5,000万円 |
ダイドードリンコ | 髙松富博会長 | 3億2,800万円 |
フジッコ | 山岸八郎元会長 | 2億9,400万円 |
タマホーム | 玉木康裕社長CEO | 2億7,700万円 |
キーエンス | 滝沢武光会長 | 2億7,100万円 |
アートネイチャー | 五十嵐祥剛会長兼社長 | 2億6,200万円 |
キョーリン製薬HD | 荻原豊取締役 | 2億3,900万円 |
大正製薬HD | 上原明社長 | 2億3,500万円 |
メディキット | 中島崇取締役 | 2億2,800万円 |
大塚HD | 大塚明彦前会長 | 2億2,700万円 |
上村工業 | 上村寛也社長 | 2億1500万円 |
エスフーズ | 村上真之助社長 | 2億700万円 |
村田製作所 | 村田恒夫社長 | 2億円 |
マニー | 松谷貫司取締役会議長 | 1億8,200万円 |
伊藤園 | 本庄八郎会長 | 1億7,300万円 |
パナソニック | 松下正幸副会長 | 1億6,500万円 |
江崎グリコ | 江崎勝久社長 | 1億3,100万円 |
ローム | 佐藤研一郎名誉会長 | 1億2,000万円 |
図研 | 金子真人社長 | 1億800万円 |
メディキット | 中島弘明会長 | 1億600万円 |
ただし、タカタはエアバッグの世界的な大規模リコール問題を抱えており、経営悪化から14年度は無配に転落することは避けられず、高田会長兼社長の自社株配当金はゼロになる情勢。自動車メーカーによる経営支援など、今後の推移によっては所有株にも影響が出てくることもあり得る。独ボッシュの日本法人からタカタに転じ、社長に就任しながら辞任に追い込まれたステファン・ストッカー前社長の所有は400株、配当金は1万2,000円だった。
メーカーの中では、医薬品や化粧品に自社株配当長者が多いのも特徴だ。大正製薬ホールディングス(HD/4581)の上原昭二名誉会長とノエビアHD(4928)の大倉昊会長が10億円超。ポーラ・オルビスHD(4927)の鈴木郷史社長は7億円、大塚HD(4578)の大塚一郎副会長は4億円強、小林製薬(4967)の山下章浩社長とコーセー(4922)の小林一俊社長は3億円台である。キョーリン製薬HD(4569)の荻原豊取締役、大正製薬HDの上原明社長、大塚HDの大塚明彦前会長(故人)は2億円台だ。
同じ医薬でも医療機器各社にも自社株配当長者が存在。フクダ電子(6960)の福田孝太郎会長は4億億円強、メディキット(7749)は中島崇取締役が2億円台と中島弘明会長が1億円台である。マニー(7730)の松谷貫司取締役会議長は1億8,200万円だ。
食品関係では、天然調味料のアリアケジャパン(2815)の岡田甲子男会長が5億円強で突出。ダイドードリンコ(2590)の髙松富博会長は3億円台、フジッコ(2908)の山岸八郎元会長のエスフーズ(2292)の村上真之助社長が2億円台。伊藤園(2593)の本庄八郎会長と江崎グリコ(2206)の江崎勝久社長は1億円台だ。
そのほかでは、HOYA(7714)の山中衛元社長が6億円台。ガス器具のリンナイ(5947)は、内藤進会長が5億台で、林謙治副会長は4億円台である。
工業用ファスナー大手で、英字紙「ジャパンタイムズ」を発行しているニフコ(7988)小笠原敏晶会長は3億5,000万円強、カツラのアートネイチャー(7823)の五十嵐祥剛会長兼社長は2億台。パナソニック(6752)の松下正幸副会長は1億6,500万円、競走馬を所有する図研(6947)の金子真人社長はおよそ1億円である。