再生可能エネルギーや省エネルギー建築、蓄電池など「環境ビジネス」の市場が膨らんでいる。大和総研が5月25日に発表した「環境ビジネスの市場規模と業況」によると、2012年に86兆円となり、2020年には100兆円になると予測。雇用者数は、2000年の175.2万人から増加が続き、2012年には2000年の約1.4倍の規模にまで増加した。今では、日本の経済成長に欠かせないビジネスとなっている。
分野別には、環境汚染防止が13.5兆円、地球温暖化対策が21.7兆円、廃棄物処理・資源有効利用が43.1兆円、自然環境保全が7.7兆円と推計。環境ビジネスに対する認識や取り組み状況などを把握するため、環境省が民間企業を対象として2010年から実施しているアンケート調査では、再生可能エネルギー分野が好調で、しばらくは市場をけん引すると見られている。
再生可能エネルギーを後押ししているのは、2012年から始まった「固定価格買取制度」。太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどで発電された電力を電力会社が買い取るものだ。資源エネルギー庁によると、2013年には再生可能エネルギーの発電構成が10.7%と1割を超えた。
関西電力が6月1日から電気料金の値上げを実施し、全国の電力会社でも一時的な値下げはあるものの、相対的には値上げ傾向が顕著となっている。今後も原子力発電の再稼働が不透明な中で、料金が下がる要素は見当たらない。意外にも、値上げの背景の一因にあるのが、固定価格買取制度を維持するために電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」の存在だ。
消費者から見れば負担が増えるが、ビジネスの視点では再生可能エネルギーは固定価格買取制度が維持される限り、安定した市場が確保される見通しが立つ。国は今後も再生可能エネルギーの構成比を高めるとしており、経済産業省が有識者会議に4月28日に示した案では、2030年度には22~24%にまで上げる計画を打ち出した。電気料金値上げ傾向が続く中で、電力を消費者が自由に選べる仕組みが進んでおり、再生可能エネルギーは有望な供給源となりそうだ。
環境に優しいエネルギーの創出は世界的な傾向で、日本の経済成長戦略でもクリーンなエネルギーを育成する産業は重要な位置付けとなっている。今後の有望な市場の一つといえそうだ。
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