高齢化社会の到来で労働市場におけるシニアの活躍に期待がかかるが、電通総研が7月2日に発表した調査によると、60代の働き手が元気なことが分かった。国も中高年齢者の再就職支援の検討を進めている。
電通総研は、50代後半に就労経験のある60~69歳の2,600人の男女を対象に仕事や働くことへの意識や満足度を調査した。それによると、定年退職後も仕事を継続する人が多数派になっており、定年退職経験者のうち、男性の約72%、女性の約55%が仕事を継続していた。
1カ月の平均手取り収入額は、男性60代前半で24.9万円、60代後半で18.8万円、女性は60代前半で11.9万円、60代後半で11.1万円。働き方は「アルバイト・パート」が主流で、男性の33.8%、女性の67.2%が「アルバイト・パート」だった。働いている60代男女の7割は現在の働き方に「満足」しており、「働けるだけで満足」と考えている人も約半数いたという。
一方で、60代の半数以上が働きたいと思っているものの、その約3割が働いておらず、特に60代後半では働きたい人の約半数が働いていないことが明らかになった。現状では、せっかくの労働力を社会や企業が生かし切れていないようだ。
国も高齢者の雇用促進に前向きだ。厚生労働省が6月5日に公表した「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」報告書によると、労働者が自らの能力・適正に適合したキャリアチェンジを自発的に選択した場合の支援策が必要だと指摘。ハローワークや雇用保険制度による再就職支援等の一層の推進を検討するとともに、試行雇用や出向・移籍などを活用した労働移動の円滑化について検討が必要とするなど、多様な角度で雇用を促す構え。
また、企業においては「希望者全員の65歳までの継続雇用は着実に定着しつつあるが、希望者全員が65歳を超えて働ける企業は少なく、健康管理・安全衛生管理や人事管理上の課題が大きい」としており、定年退職後の労働者の雇用継続の課題克服を呼びかけている。
定年後に趣味や旅行にいそしむのも結構なことだが、働けるうちは働きたいという高齢者は多数存在している。労働市場の中で、高齢労働者が存分に力を発揮できる仕組みづくりが急がれる。
【関連記事】
・シニア世代の情報端末動向 信頼していないメディアの1位は「テレビ」
・シニア層の生きがい、「趣味」が6割 旅行や留学、商品強化する企業も
・高齢者人口、過去最高に 行動するシニアを狙ったビジネスが成功のカギ
・自治体発行のシニア向け「優待カード」 高齢者の外出促進や地域活性化に一役
・若い男性、3人に1人が「給料日までもたない」 節約デート、男女ともに積極的