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GDP統計とは -客員エコノミスト ~塚崎公義 教授-

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2016/05/06 09:00

要旨)
・GDP統計とは、一国の経済を全体として捉える統計である。
・個人消費、設備投資、輸出等の合計から輸入を引いた値である。
・名目GDPは各国の経済規模比較などに、実質GDPは成長率計算に使う。
・ゼロ成長が不況なのは、失業者が増えてしまうから。

(おまけの要旨)
・GDPデフレーターは経済の体温計

(本文)
・GDP統計とは、一国の経済を全体として捉える統計である。
5月18日に、昨年度の経済成長率が発表になるのに先立ち、今回はGDP統計(国内総生産)というものについて復習しておきたい。
経済統計は多数あるが、それぞれ経済の一側面を捉えたものである。そうした中でGDP統計は、それらの統計を総合的に利用して、日本経済を全体として捉えた統計である。
GDP統計は、3つの作り方がある 。いずれも(統計上の誤差がなければ)同じ結果となる。第一は、生産者に「どれだけ作ったか」を聞いて合計する方法である。ここで「作った」とは売値から仕入値を引いた値で、「付加価値」と呼ばれるものである。財のみならずサービスも含まれる。
たとえば自動車の部品会社が30万円の部品を作り、自動車会社がそれを仕入れて100万円の自動車を作り、自動車販売会社がそれを仕入れて120万円で売ったとすると、部品会社の30万円と自動車会社の70万円(100万円マイナス30万円)と販売会社の20万円(120万円マイナス100万円)の合計である120万円がGDPだということになる。
第二の作り方は、買い手に聞いて合計する方法である。120万円の自動車が生産されて売られたということは、消費者に聞けば「120万円の自動車を買った」という回答が得られるはずなので、両者の合計は一致するはずなのである。
第三の作り方は、勤労者に給料を、企業に利益を聞いて合計する方法である。企業の付加価値(売上げマイナス仕入)から賃金を差し引いたものが利益であるから、給料と利益の合計をすればGDPが求まるのである。

・個人消費、設備投資、輸出等の合計から輸入を引いた値である。
第二の作り方として、買い手に聞いて合計すると記したが、買い手は多様である。同じ自動車でも消費者が買えば個人消費となり、企業が業務用に買えば設備投資になり、外国人が買えば日本の輸出になる 。もっとも、単純にこれらの合計をGDPとする事はできない。輸入車を買った人がいると、日本国内で生産された自動車よりも大きな数字が得られてしまうからである。したがって、買い手の回答を合計した値から、輸入された分を差し引く事でGDPが得られるのである。
GDPの3通りの作り方の中で、これが最も注目されている。理由の一つは最初に発表されるからであるが、更に重要なのは、「買い手がいるから作られる」ということである。農業国であれば、「とにかく生産して、余ったら翌年食べる」という事であるから、生産能力や農家の働き具合などが重要であるが、自動車等の場合には生産能力よりも需要動向の方が遥かに重要だからである。
景気を予想する際には、GDP成長率を予想するのであるが、その際には「給料が上がるから個人消費は増えそう」「円安だから輸出が増えそう」といった方法が採られるのが一般的なのである。

・名目GDPは各国の経済規模比較などに、実質GDPは成長率計算に使う。
GDP統計は、日本経済の規模を表す統計である。当然ながら各国に同様の統計があるので、各国の経済規模の比較などを行なうことが出来る。その際、日本のGDPを為替レートを用いてドル建てに換算するため、為替レートが変動すると各国のGDPの順位が変動する事もあり得る。たとえば日本の場合にはGDPが米国と中国に続く世界第三位であるが、円安が進むと四位のドイツ、五位の英国などに抜かれる可能性もある。
GDP統計を用いた国際比較の今ひとつは、財政赤字等のGDP比である。「日本の財政赤字は韓国より大きい」と言われても、そもそも経済規模が日本の方が遥かに大きいのであるから、財政赤字の一国経済に対する重さはわからない。そこで、財政赤字額をGDPで割った値を比べることによって、日本経済にとっての財政赤字の重さと韓国経済にとっての財政赤字の重さを比べる事ができるのである。もちろん、財政赤字のみならず、貿易赤字等々の比較についても同様である。
外国と比べるのではなく、過去の日本のGDPと比べることも重要である。前年に比べてGDPがどれだけ増加したかという増加率を「経済成長率」と呼ぶ。経済成長率には二通りあり、単純に前年のGDPで割った値を「名目経済成長率」、名目経済成長率からインフレ率を差し引いた値を「実質経済成長率」と呼ぶ(くわしくは、おまけ参照)。
GDPが2倍になったとしても、物価も2倍になっていたら、自動車等の生産量は不変で、自動車工場等に雇われる人数も不変であるから、景気には特段の影響は与えない。しかし、物価が一定でGDPが二倍になったとしたら、自動車等の生産量が2倍になり、雇われる人も大幅に増加するので失業が減り、景気が良くなるはずである。したがって、景気を考える上で圧倒的に重要なのは実質経済成長率だということになる。そこで、単に「経済成長率」という場合には、実質経済成長率を指す場合が多い。本稿の後半部分を含めて、である。

・ゼロ成長が不況なのは、失業者が増えてしまうから。
経済成長率が高いと、企業が多くの労働者を雇うので景気が良くなる。一方で、経済成長率がマイナスだと、企業が生産を減らして雇用を減らすので失業が増え、景気が悪くなる。したがって、景気の予測は経済成長率の予測である、と言っても過言ではない。
では、「ゼロ成長だから不景気だ」と言われるのは何故であろうか?成長率がゼロということは、前年と同じ量の物が作られ、使われるという事であるから、人々の生活水準が落ちるわけではないのに、なぜ困ったことだと言われるのであろうか。その答は、技術進歩にある。
技術が進歩すると、従来よりも少ない人数で同じ量が作れるようになる。したがって、日本経済全体の生産量が前年並みということは、生産に携わる人間が前年より少なくて済むということになり、その分だけ失業者が増えるということになる。だから困ったことなのである。
ちなみに技術進歩というのは、新しい発明発見のことではなく、国内で使われている技術のことである。日本の農家は既にトラクターを所有しているので、最新式のトラクターに買い替えたとしても一人当たり生産量の伸びは小さいが、中国の奥地では人力で畑を耕しているので、トラクターが導入されると一人当たり生産量が飛躍的に増える。したがって、日本ではわずかな経済成長でも失業が増えないのに、中国では7%程度の成長がないと失業が増えると言われている。こうした成長率のことを「潜在成長率」と呼んでいるわけである。


(おまけ)
・GDPデフレーターは経済の体温計(やや専門的です)
上で、名目経済成長率から物価上昇率を差し引いた値が実質経済成長率である、と記したが、実際には異なる計算がなされている。「前年と様々の物やサービスの値段が変わらなかったとしたら、今のGDPは何円になっていたはずか」を計算するのである。その結果を前年と比べることで、物価変動の影響を除いたGDPの変化、すなわち「日本国内で生産された財やサービスの量の変化」を求めることが出来るのである。その結果は実質GDPと呼ばれ、これと区別するために普通のGDPは名目GDPと呼ばれる。
名目GDPを実質GDPで割った値がGDPデフレーターと呼ばれる値で、消費者物価指数が消費材のインフレ率であるのと同様に、「日本経済のインフレ率」といった数値である。

・原油価格の変動はGDPデフレーターに影響しない
GDPデフレーターに関しては、気をつける事が一つある。輸入物価が変動しても、GDPデフレーターは動かないのである。少し難しいが、説明しよう。
昨今、原油価格が大幅に値下がりした。しかし、これは価格の変化であって、数量の変化ではないから、実質GDPは変化しない。名目GDPは如何であろうか。じつは、名目GDPも変化しないのである。GDPは「個人消費+設備投資+輸出等−輸入」で求められる。原油価格が下がると輸入が減るのと同時にガソリン価格等の値下がりで個人消費等も減るため、差引した結果の名目GDPは減らないのである(原油の値下がり分がそっくり小売価格の下落につながった場合)。したがって、GDPデフレーターも影響を受けないのである 。
そこで、GDPデフレーターは「経済の体温計」と呼ばれている。消費者物価指数もGDPデフレーターも、国内経済が過熱すると上昇する点では同じであるが、消費者物価指数等々が、原油価格下落の際に下落するのに対し、GDPデフレーターは原油価格などには反応しないため、消費者物価指数よりも国内の景気を素直に反映するからである。
ただし、原油価格には影響されないGDPデフレーターも、円高円安の影響は受けるので、注意が必要である。円安になると、輸入デフレーターと輸出デフレーターが上昇する。ドル建て輸出入価格が一定だと、輸出も輸入も円建て価格が上昇するからである。日本は輸出と輸入が概ね同金額であるため、これらが相殺しあうことになる。加えて、輸入価格の上昇が国内物価に波及するため、この分だけGDPデフレーターは上昇するのである。
原油価格の変化の場合は、輸入価格と国内価格だけに影響するので相殺されて終わったが、円安の場合はそれに輸出価格が加わるため、結局影響を受けるのである。

・GDPデフレーターは消費者物価指数より下落しやすい
消費者物価指数と比べると、GDPデフレーターの方が下落しやすいことには注意が必要である。消費者物価指数が多少の上昇を見せても、GDPは下落を続けている場合もあり、「デフレ脱却」の判断が困難になるケースもあり得るからである。第一に、GDPデフレーターには設備投資が含まれているからである。設備投資は、技術進歩により価格が低下しやすい物が多く含まれているので、消費財よりも値下がりがしやすいのである。第二に、やや専門的なので詳述は避けるが、消費者物価指数がラスパイレス指数、GDPデフレーターがパーシェ指数ということで、計算方式が異なっているからである。
もっとも、上記のように、原油価格が大幅に値下がりした場合については、この限りではない。



【提供:TIW



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