「官から民へ」の廃品回収ビジネス
昨年末に相次いで上場した2社、要興業(6566)とミダック(6564)のビジネスに迫ってみた。両社とも廃棄物の収集運搬や処理を手がける。同業といっていいだろう。
人通りが少ない早朝の繁華街などでは、シャッターが下りている店舗前に置かれたゴミ袋を忙しそうに回収してはすぐに走り出す、ゴミ収集運搬車を何台も見かけるものだ。ゴミの収集は基本的には行政が担っているが、それを補完している形。民間企業のゴミ収集運搬車である。
ゴミの種類によっては月極契約の場合もあれば、独自のゴミ袋を販売するなど各社各様であり、競業による価格競争や規制強化という逆風も受けるが、ゴミ処理は切実な問題であり、求められる役割や需要が消えてなくなることはないはずだ。「官から民へ」というのが基本的な流れでもあり、マークしておきたいビジネスのひとつである。
とくに毎日生ゴミが出る飲食店にとっては欠かせない存在。ある居酒屋の店主は「毎日回収してくれるからゴミを店で保管する必要がなく、ゴミの選別についてもそれほどやかましく言われないのがいいね」と、民間利用のメリットを語る。
要興業、独自の配車ソフトで効率的な収集を実現
民間大手として、東京23区内の店舗や事業所で発生する産業・一般廃棄物の収集運搬、処分業務を手がけているのが要興業である。定期的に回収する契約を結んでいる事業者はおよそ7000。それを自社で保有する400台超の収集運搬車で回収するわけだが、およそ400人のドライバーのうち300人は正社員だそうだ。
収集ルートの“路線化”といっていいだろう。自社開発の配車ソフトやGPS装置を搭載した無線機などの活用で、より短い距離で多くの廃棄物の運搬を可能にしているともいう。
同社は収集した廃棄物を行政が運営している清掃工場に運搬するほか、自社で保有している複数の中間処理施設(リサイクルセンター)に運び込み、古紙、ビン、缶、ペットボトル、粗大ゴミなどの選別、破砕、圧縮といった処理を実施することで再資源化するリサイクル事業も展開。東京23区から委託を受け、リサイクルセンターでの再資源化や家庭ゴミの収集を代行する行政受託事業も業務のひとつとしている。
売上高は「収集・運搬事業」が7割弱、「リサイクル事業」が1割強、「行政受託事業」が2割弱といったところ。ちなみに、東京23区の家庭ゴミの運搬を請負う業者は「雇上(ようじょう)業者」と呼ばれ、その契約は「雇上契約」と表現されるという。
上場から日が浅いため決算資料は限られるが、要興業の経営状況も確認しておこう。
同社の設立は1973年。最近の新規上場で目立つ社歴が浅いネット関連企業とは対照的に、着実に黒字経営を継続してきたのが最大の特長である。その証ともいうべき創業からの利益の蓄積を示す利益剰余金、いわゆる内部留保はすでに110億円を突破。毎年の株式配当を実施しているほか、年間の納税額も数億円規模に膨らんできた。

表に示したように、本業による儲けを示す営業利益率は10%を超える。まずまずの数値だ。同時に、経常利益率が営業利益率と同水準であることに注目したい。これは本業でも儲けを出しているが、企業活動では不可欠な副業(主に財務活動)でも、結果を出していることを意味している。
実際、要興業はスーパーのライフコーポレーション(8194)や明治ホールディングス(2269)などの株式を所有しており、それにともなう受取配当金、それに保険解約返戻金などを「営業外収益」として計上している。
1万円にたとえた単体ベースの収支からは、儲け具合はもとより、人件費などの経費割合も浮かび上がってくる。
原価7731円のうち、処理費用は2512円で、現場人件費は3333円に相当している。つまり、収集運搬車のドライバーやリサイクルセンター従事者など、現場部門の人件費は収入に対しておよそ33%を占めているということ。一方で、営業・管理部門従事者の給与と役員報酬の合計は475円相当であり、収入に対する割合は5%弱。従業員平均給与およそ530万円、社内取締役の平均年俸2000万円強という金額は、それらを反映したものである。